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番号 KD07054 名前 超監督涼宮ハルヒ 読み ちょうかんとくすずみやはるひ Lv 7 スター 種別 ユニット BP 6500 SP 1500 【いい? 監督の命令は絶対なのよ!】○夢(プランゾーンからプレイできる)○希望(スマッシュから反撃!)相手のターンなら、自分の手札にあるユニットを1枚まで選び、味方のいないスクエアにリリースして置く。 移動方向 ↑ 属性 SOS団北高校神♀ ブロック 角川書店2.0 作品 涼宮ハルヒシリーズ レアリティ R 超監督なハルヒのカードで夢と希望を持つ高スペックのユニットになっている。 BPに不安がなくもないが、当然「SOS団」を持っているのでキョンで強化するといいだろう。 長門有希に能力とスペックで負けているので採用率は控えめ。 最大の特徴はユニークな希望の効果。敵に飛ばしても良いし、比較的安全に敵エリアに送って次の自ターンのスマッシュを狙うもアリ。
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俺が朝目覚めると、目の前にハルヒの寝顔があった。 一瞬戸惑ったが、昨日のことを思い出す。 ちなみに俺達は付き合っていたのだが、こういうことをしたのは今回が初めてだ。 俺もまぁしたくないわけではなかったのだが、ハルヒに拒否されるかと思うと怖くて出来なかったんだ。しかし、昨日ハルヒが俺のことを挑発してきて、ついに俺の理性がぶちぎれてしまったわけだ。 そう、俺とハルヒはその何と言うかまぁそういうことをしてしまったわけだ。 ハルヒは中学時代に付き合いまくってたにも関わらず初めてだった様だ。まぁ、俺もそうだったがな。 そんなことを思いながらハルヒの寝顔を見る。 やっぱりきれいだ。俺の自慢の彼女だもんな。 時計を確認すると、そろそろおきたほうが良い時間のようだ。今日は学校もあるしな。さぼろうかと思ったが、ハルヒと二人でさぼったら古泉たちに何を言われるか分からん。 さて、ハルヒを起こすか。 俺が起こすと、ハルヒは比較的寝起きが良いようで、スッと起きた。 「おはよう」 あぁ、おはよう。体、大丈夫か? 「あ、うん///大丈夫そう。ちょっとスースーするけど…」 学校行けそうか? 「大丈夫」 そうか、じゃ早く準備して行くぞ。 「キョン、おはようのキスして。」 あぁあぁ、わかりましたよ。 チュッと軽いキスを落とす。 「ねぇ、もっとやってよぉ」 仕方ねぇな・・・学校前だぞ? 俺たちはさっきより濃厚なキスをした。 「ぷはぁ・・・キョン、朝から激しすぎよ。」 すまん、お前が可愛すぎだからだ。 「もう///」 すると、俺はあるいたずらを思いついた。 おいハルヒ、お前今日俺のいう事聞いてくれるか? ちなみにこういうとき、ハルヒは大抵俺のいう事を聞いてくれる。付き合う以前はともかく、こいつから告白してきたし、ハルヒは俺と二人っきりの時は比較的素直だ。 「何?キョン」 これ挿れて学校行ってくれないか? 「え、これって…」 俺達は昨日、初夜だとは思えないほど激しいプレイをし、道具なども使ったわけだ。 俺の手に握られていたのは、昨日ハルヒの前戯に使ったバイブだった。 「でも…」 いいだろ? 「ばれちゃわないかな?」 大丈夫だよ、お前もスリルは大好きだろ? ほら入れるぞ。 「あ・・・ん」 ハルヒの中にバイブを入れる。 「ん・・・あぁん・・・」 おいハルヒ、もう感じてるのか?一日持たないぞ? 俺の中で何かのサディズムが目覚めてしまったようだ。 まぁ、付き合う以前は散々尻に敷かれていたし大丈夫だろう。 何やかんやあったが、俺達は無事に学校に時間通りについた。何とか一緒に来たこともばれなかったようだ。 そして ハルヒの膣には今バイブが挿入されている。 授業は始まったが、ハルヒは真っ赤な顔をしたままずっと下を向いたままだ。 かくいう俺はチラチラと後ろを確認している。 すると、ハルヒが俺をつついて小さな声で言ってきた。 「キ、キョンー…あ・・・はぁ・・・もう無理っぽいよぉ・・・」 確かに、もうハルヒの秘部から出たと思わしき匂いが充満し始めている。このままじゃばれてしまうかもしれない。 じゃぁ、この授業が終わるまで我慢できるか? 「が、頑張ってみるわ・・・」 休み時間になった瞬間、ハルヒが話しかけてきた。 「キョンー・・・早く抜いてぇ・・・もう無理だよぉ」 そうかそうか、よく我慢したな。 ほら、立て。保健室行くぞ。 ハルヒは立とうとしたが、その瞬間にしゃがみこんでしまった。 「キョン、立てないよぉ、足に力が入らない・・・」 仕方がない、俺はハルヒをお姫様抱っこして保健室に行った。 すると、ちょうど良いことに保健の先生は居なかった。 ほら、ハルヒ、寝転がれ。抜いてやるから。 「ありがと・・・キョン。」 ハルヒは顔を真っ赤にしていて、相当感じているようだ。 俺はハルヒをベッドに寝かせ、先生が来てもばれないようにベッドの周りのカーテンを閉める。 ハルヒ、足を開けろ。 グチョ、ヌチャ いやらしい音を立てながら、ハルヒが股を開く。 俺はパンツの上から、軽くハルヒの秘部を撫でる。 「あ・・・」 ビチョビチョじゃないか、むしろ洪水だ。感じてるのか?ハルヒ。 「ん・・・もう、キョンのせいなんだから。」 俺はハルヒのパンツをずらし、バイブを抜いた。 抜いたあとにハルヒのハルヒの穴を見ていると、何かを求めているようにヒクヒクしている。 「キョン、そんな見ないで・・・」 そうか。 俺はそういうとハルヒのパンツを元に戻した。 正直俺も今すぐにでも押し倒したかったし、俺の息子もかなり大きくなって居た。それにハルヒも感じていて、もっとして欲しいようだ。だが、あえて裏切ってみる。 「え・・・?キョン、もっとしてくれないの?」 何言ってるんだ、ここは学校だぞ?家まで我慢できたらやってやるよ。 「えー・・・」 やれやれ、これからあと学校が終わるまで、俺もハルヒも耐えられるかな・・・ っていうか初めてなのに二人ともやりすぎだろw
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autolink SY/W08-023 カード名:涼宮ハルヒの朗報 カテゴリ:クライマックス 色:黄 トリガー:2 【永】あなたのキャラすべてに、ソウルを+2。 みんな聞いて!朗報よ! レアリティ:CR illust.- 谷川流・いとうのいぢ/SOS団 初出 アニメージュ2006年8月 ・対応キャラ カード名 レベル/コスト スペック 色 見えざる信頼関係 ハルヒ&キョン 1/1 5500/1/1 黄
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第3話 ~もう1人~ そろそろ俺達が崖から落ちてから10分程経っただろうか。朝比奈さんはまだ俺の胸に気持ち良さそうに顔を うずめていた。とても嬉しいことだがそろそろ俺たちも竹をとりに行かんとまずいな。 「朝比奈さん、そろそろ行きましょう。もう時間が…って!えっ!?」 「ふえっ!?どうしたんですかキョンくん?」 どうしたもこうしたも手元の時計で計ってみたところ、もう集合時間まで1分をきっていた。どうやら朝比奈 さんと寝転がっている内にかなりの時間が経っていたようだ。しかもここから集合場所までは俺一人で走った としても5分はかる。 「緊急事態です朝比奈さん。もう集合時間まで1分も有りませんよ!」 「ええ!!ほ、本当ですかぁ!?い、急がないとキョンくん!」 「分かってますよ。行きましょう朝比奈さん。」 「はい!あ、いたっ!!」 「大丈夫ですか!?朝比奈さん!!」 見るとなんと朝比奈さんのお美しい足に青アザが出来ており、朝比奈さんはそこを抑えてうずくまっていた。 どうやら落ちたときに強く足を打ちつけてしまったらしい。くそっ!俺がしっかり守ってあげられなかっった だからだ。 「あ、大丈夫ですよこれくらい。ほ、ほら…」 と言って立ってみせる朝比奈さんだが、足はぷるぷる震えてるし、顔には苦悶の表情を浮かべていおり、心配 させまいと強がりを言っているのは明らかだった……すみません朝比奈さん。俺が不甲斐無いばっかりに。 「わ、わ、わ、な!何ですか!?キョ!キョンくん!!?」 俺は朝比奈さんの背中に腕をまわし、そのまま肩を軽く掴み、さらにもう一方の空いたほうの手で両足を持っ て、そのまま朝比奈さんを持ち上げた。まぁつまり、俗にゆうお姫様だっことゆう体制になっていた。 朝比奈さんはシャミセンを無理やり持ち上げた時のように暴れていた。しゃあない… 「足怪我してるんですから、無茶しちゃだめですよ。」 「で、でも…恥ずかしいよぅ…」 それでもまだ少し暴れる朝比奈さん。こうなりゃ奥の手だ。 「良い子ですから、暴れないでください。ね。」 俺はの肩を支えていた手を朝比奈さんの頭に持っていって、そのまま頭を撫で、朝比奈さんに顔を近づけて耳 元で囁いた。 「ぇ?ぇ?ふぇ?………は、はい…」 朝比奈さんは真っ赤になって俯いてしまったが、やっと大人しくなってくれた。 俺も落ちた時に腰を痛めていたのであまり早く動けず、結局集合場所に着いたのは集合時間をすでに10分も 過ぎてからだった。あぁ…きっとハルヒのやつにとんでもなくぶちぎれられるんだろうな…そして今日の昼飯 代は俺もちなんだろうな…… しかしハルヒは何にも言ってこず、その上ただ俯いているだけだった。しかしハルヒの代わりに古泉と鶴屋さ んが声をかけてきた。 「遅かったではありませんか。それよりどうなさったんですかその体勢は。」 「こらキョンく~ん!!みくるにおいたしちゃだめって言ったろ~!」 とりあえず俺が朝比奈さんをお姫様だっこしているのをつっこまれた。まぁ当然だな。 「ところで笹はどうしたにょろ!?」 「もしや朝比奈さんがあなたの笹だとでも言うんですか?あなたもずいぶん気障になられましたね。」 勝手に気障ったらしい事言い出すんじゃねぇ古泉。 「さっき鶴屋さんにお会いしましたよね。実はそのすぐ後に後ろにあった崖に落ちちゃいましてね。はは…」 苦笑しながら言うと、鶴屋さんは笑うのを堪えている様な顔をしていたが、それでも少し心配そうな目で朝比 奈さんを見ていた。 「ぁ、だ、大丈夫ですよ。キョンくんがわたしのこと抱きしめて守ってくれましたから。ちょっと足を打っ ちゃっただけで…」 と、朝比奈さんは鶴屋さんを安心させようとして言った。少しポーっとしていたように見えたのは俺の自惚れ か? その時長門が朝比奈さんを血走った目で睨んでいた様に見えたのはきっと気のせいだろう…うん!きっ とそうに決まってる! 「凄いですねあなたは、落下している人間を空中で抱きしめて身を挺して守るなんて…どこのスーパーマンで すかあなたは。」 「いや~本当だよぉ!!凄いよキョンくん!!」 「本当に格好良かったんですよんですよ、キョンくん。」 「いやいやたまたまですよ。」 「そうご謙遜なさらずに、そんなことが出来るのは新川さんだけだとおもっtぶふっ!!?」 気になる言葉を残して突然古泉が吹っ飛びそこから長門が現れた。 「………………………」 長門は確かにいつもの無表情だったがその周りからは確実に殺意を更に5段階位飛び越えた様な明らかに危険 な空気が漂っていた。あの~な、長門さん。いったいなな何をそんな怒ってらっっしゃるんですかぁ?思わず 朝比奈さん化してしまう程長門は大迫力だった… すると突然長門は朝比奈さんに手を掲げ、例の超高速呪文を唱えだす長門。その間朝比奈さんは本気で泣いて おり、恐怖のあまり俺に抱きついていた。そして長門の呪文が終わった。 「もう足は痛まないはず…」 突然の長門の一言に呆然とする朝比奈さんと俺。成る程さっきの呪文は朝比奈さんの足の怪我を治してくれた のか。 「あなたは今すぐ彼から離れるべき。」 「ふぇ!?は!はいぃ!!」 朝比奈さんは長門の恐怖のオーラに当てられて、慌てて俺から飛びのいた。古泉苦笑しつつもにやにや。鶴屋 さん大爆笑。 「ちょっとあんた達、いい加減笹を審査するわよ」 さっきまでずぅぅっと黙っていたハルヒがやっと喋った。しかしやっぱりどこか気だるそうな感じだった。 「ああ、そうでしたね。すいません。それでは新川さん、お願いします。」 長門にぶっ飛ばされて倒れていたはずの古泉がいつのまにか俺の横に立っていた。 「かしこまりました。それでは笹をお出しください。それではまず涼宮様と鶴屋様からどうぞ。」 そう言われたハルヒは暫くの間ボーっとしていたが、鶴屋さんに小突かれて、はっとした様に鶴屋さんと何処 からか笹を取り出した… ハルヒと鶴屋さんの笹は素人の俺から見ても素晴らしさが分かるほどの物だった。 「ふむ、これは何とも素晴らしい笹ですな。実に美しい…そして何よりこのでかさ。」 そうなのだハルヒたちの竹は異常なほどでかく、そのでかさは軽く15メートルはあろうという物だった。一体 何処から出しやがったんだ。新川さんは表情にこそ出していなかったが、いい笹を見れて少々興奮気味だった ようだ。なんだ?この人はダンボールだけでなく笹にまで精通してるのか? 「あ、新川さん。」 「む、そ、そうでしたな…げふん、で、では次に長門様と古泉様の竹を。」 古泉に言われ、気を取り直した新川さん。そして長門が笹を取り出した。何処からともなく… 「「「………????」」」 ………………………………………………………………すまん…素直声が出ない。それは俺だけでなく新川さん と朝比奈さんもだった。鶴屋さんはなぜか腹を抱えて笑っており、古泉はいささか引きつった笑顔だった。 そこには何が現れたのか?しかしソレはあまりに形容しがたい物体だったため俺にソレのについての意見を求 められてもだいぶ、とゆうかかなり困る。とゆうか本当に笹なのかこれ?なぁ…長門… とゆうかこれは何なんだ一体?さっきは形容しがたいと言ったが、あえてここは言っておいたほうが良いな。 おい長門。この触手だらけの植物のようなものは何だ?どう見たって危険な生き物にしか見えないぞ。 「危険ではない。これはマン○ーター。」 その名前じゃ余計危険にしか聞こえんぞ長門…つーか笹じゃないだろマン○ーターは… 「マン○ーター?これはマン○ーターではない。ただのでかい笹。」 うそ付け!さっきまで自分で言ってたじゃねーか。とゆうかこんな不思議丸出しみたいなもんハルヒに見せて 良いのか?ん?何だ?ハルヒのやつ、どうしようもないくらいボーっとしてやがる。何なんだ一体?まあ気付 いてないんならそれで良いんだが… 「……審査を…」 これは長門だ。 「むぅ、これは難しい審査でした…しかし、今回の大会の審査対象が笹である以上!マン○ーターは審査対象 とみなします。よって…涼宮様と鶴屋様の優勝でございます!」 「やったにょろ~!!めがっさやったね!ハルにゃん!」 飛んで跳ねて喜ぶ鶴屋さんだったが、ハルヒはなんだかいまいちの反応だった。いや、むしろ無反応に近かっ た。珍しい事も有るもんだな、ハルヒが勝負事に勝ったのに大喜びしないなんて。 「ところでハルヒ、これからはどうするんだ?笹とってそれで解散か?」 「………」 話しかけたが、返事をせずにただボーっとしているだけだった。何だコイツは、いきなり無視か? 「おいハル「それでは笹とり大会も終わったことですし、皆さん、昼食にしましょう!」 俺がハルヒに声をかけようとしたら古泉のヤロウが割り込んで遮ってきやがった。一体何がしたいんだコイツ は。 しかし、俺が古泉に文句の1つでもぶつけてやろうとしたら、突然朝比奈さんがちょんっと俺の裾を引っ張っ て、上目遣いで俺を見上げていた。く~正直たまりません!! 「キョンくん、お昼ごはんの準備をしますから、そのぉ…手伝ってくれませんか?」 あなたにそんな顔で懇願されたらどんな無茶な注文だって受け付けますよ。 「ふふ、ありがと。」 そしておれは朝比奈さんと先に昼飯の準備(といっても昼飯自体は朝比奈さんが弁当を作ってきてくれたので 折りたたみ式のテーブルと椅子を出すだけだが)をしている新川さんと鶴屋さんの所へ向かった。 ふと振り返って見ると古泉は未だにボーっとしているハルヒになにやら話しかけていた。 ん?長門はどうしたかって?あぁ、長門なら突然マン○ーターを引っ張って物陰に隠れたと思ったら、直後 にすごい派手な音をたてだしたな…何なんだ?今度はマン○ーターと戦ってんのか、長門よ… さて、昼飯の準備も終わってハルヒ、古泉、長門を抜いた俺たちは朝比奈さんがお作りになられた弁当をつつ いている。 「どうですかぁ?変な味とかしませんか?」 「安心してください、とてもおいしいですよ。」 「本当ですかぁ?良かったぁ。」 ああ、マジでうまい。この弁当こそきっと神の味という代物に違いない。 と、暫くして長門が帰ってきた。ん? 「おい長門。何だそれは?」 長門は両手に料理の盛られた皿を持っていた。 「……野菜炒め。」 野菜炒め?なんだかいやな予感をひしひしと感じるんだが… 「あなたは先ほどから何も食べていない。これはあなたに…」 と言って長門は新川さんに野菜炒めを渡していた。 「有難く戴きましょう。」 と、新川さんは初孫の誕生を喜ぶ爺さんの様な顔で長門を見ながら言った。そんなとても嬉しそうな顔してい る新川さんを見ていると、とても長門の料理に文句なんて言えなかった。だから俺は小声で長門に聞いた。 「おい長門、今度は何を入れたんだ?またミノタウロスか?」 「今回はミノタウロスは使っていない。ただの豚肉…」 「そうか、ところでマン○ーターはどうしたんだ?ん?野菜炒め?……おいまさか!?」 「…………。」 「あ!!新川さ「ぐっ!!がっ!?………ふっ…」バタッ 「美味し過ぎて気絶した。」 新川さんはのた打ち回った後に気絶した…朝比奈さんは半泣き状態、長門は新しい野菜炒めを取り出した。 「朝比奈みくる、あなたはお弁当を作ってきた。これは私からあなたへの感謝の気持ち。あなたのはマンイー ターだけでなく肉はミノタウロスを使っている。とても美味。」 野菜炒めを持って本気で泣いてる朝比奈さん迫る長門。 「こらこら、止めなさい長門。朝比奈さんが泣いてるじゃないか。」 「何故?私は感謝の気持ちを表したいだけ。」 「だとしても、マンイーターなんて、人間が食べたら死んじまうだろーが。それは自分で食べなさい。」 「……そう、分かった………チッ、モウスコシデジャマモノヲケセタノニ……」 「ん?なんか言ったか長門。」 「何も。」 はぁ、危なく朝比奈さんを見殺しにしてしまうところだった… 「キョンく~ん。怖かったよぉ。」 あ、あぁ!朝比奈さん。そんな急に抱きつかれたら、特大のバストが……あぁ、俺もう死んでも良いや。 しかし長門は俺たちのそんな様子をとんでもなく鋭い眼光で睨んでいた。 そんなこんなで騒いでるうちにハルヒと古泉がやってきた。 「皆、そろそろ部室に戻るわよ。」 「お前は昼飯を食わんのか?」 「ええ、なんか食欲がわかないから良いわ。あ、ごめんねみくるちゃん、せっかくお弁当作ってくれたのに。」 「あ、気にしないで下さい。」 なんとあの食欲の権化のハルヒが昼飯を抜くとは。まして朝比奈さんの弁当を食わないなんてな。何かあった のか?それともこれも七夕パワーか?とゆうかやっと返事を返すようになったか…さっきまでのシカとの嵐は 何だったんだ? 「さぁみんな!この短冊にお願いを書きなさい!」 部室に帰ってきた俺たちにハルヒは短冊を配り叫んだ。因みに気絶していた新川さんだが… ……… …… … それは少し時間を遡ってあの山から帰る時の事。 「ところで、新川さんはどうするんだ?やっぱり担いで連れて帰ったほうが良いのか?」 完全にのびちまってる新川さんを指差しながら、俺は古泉に聞いた。しかしその答えは意外なところから返っ てきた。 「その必要はありません。新川はこちらで連れて帰ります。」 森さんである。一体いつの間に…? 「僕が呼んでおいたんですよ。新川さんが倒れてしまいましたからね。」 「まぁ森さんが来ること自体は別に良い。だがな…森さんの後ろにいるその人たちは一体誰だ?」 そう、森さんの後ろには黒いサングラスに黒いスーツを着たいかにも怪しそうなごつい男が二人も立っていた のである。 「知っていますか?世の中には知らないほうが幸せな事とゆう事も有るんですよ。」 古泉はいつもの爽やかな笑顔を少し邪悪なものに変えて言った。よく見ると、森さんも満面の笑みながらもそ の笑顔からは邪悪なものを感じ取れた。なんだか機関がとても恐ろしい組織に思えてきたな… そうして、新川さんは二人のこわもての男たちに厳かに運ばれていき、それに森さんも付いて帰っていった。 ……… …… … とゆう訳である。 「ん?おいハルヒ。今年は短冊は1つだけなのか?」 ハルヒが短冊を配り終わってから俺は気づいた。去年は2枚も書いたのにな。 「ええそうよ。よく考えてみればこうゆうのに科学的な理論は必要無いと思うのよ。」 何だかんだ言ってはいるがただ単に10何年も待ってられなくなっただけじゃねえのか? 「とにかく、こーゆのは気持ちの問題なのよ!だから1つで十分なの!」 「やれやれ。」 「あっ、それから自分の短冊は他の皆に見せちゃ駄目だからね。その方が願いが叶いそうだわ。」 そう言ってハルヒは、脚立を使ってさっき鶴屋さんととってきた巨大な笹のてっぺんに自分の短冊を括り付け た。丁度俺も書き終わったとこなのでハルヒの後に括り付ける事にした。ん?何だコイツは… 呆れた事にハルヒは俺の脇から横目で俺の短冊の内容を覗き見ようとしていやがった。 「おい、短冊は自分以外見ちゃいけないんじゃなかったのか?」 そう言うとハルヒは一瞬だけしまったって感じの顔をしたが、すぐにまた眉毛をキュルリと吊り上げ、俺を睨 みつけてきた。 「何言ってんのあんた!団長には団員がどんな願いをするのかしっかり確認する義務があるのよ!」 「それじゃあ、俺の願いは叶わないんじゃないのか?」 「猪口才な事言ってないで今すぐ見せなさぁぁい!」 やれやれ、まったくコイツは… 「お、そういや古泉が『涼宮さんをを嫁にくれ。』って書いてたぞ。」 「えぇ!?ほ!本当に!?古泉君!」 もちろん嘘だが。 「い、いえ、そんな事かいてませんよ…適当なこと言わないで下さいよ。」 よし、ハルヒが古泉に気をとられてる内に… 俺は馬鹿でかい笹の特に笹の葉が多く茂っているところの一番奥に短冊を突っ込んだ。 「ちょっとキョン!何適当な事言ってんのよ…ってあんた!短冊はどうしたのよ!まさか…もう吊るしちゃっ たなんて言うんじゃないでしょうね!」 ああ、その通りだが。 「な!?どこよ!どこに吊るしたのよ!?今すぐ取り出しなさい!」 「こんなでかい笹持ってくるから見つからないんだよ。」 その後もハルヒはぎゃあぎゃあ言っていたが、俺は鮮やかにその全てを無視し、朝日奈さんの煎れて下さった ありがた~いお茶を堪能していた。 全員が短冊を掛け終わった後に 「じゃあもう今日はそのまま解散ね。」 とハルヒがいった。やれやれ、やっと帰れるか… 「ただしキョンとみくるちゃん。あんた達は笹とり大会でビリだったから罰ゲームよ!」 はぁ、そういや最初にそんな事を言ってたな。どうせろくでもない事をさせられるんだろうな… 「罰ゲームは荷物持ちよ!みくるちゃんは鶴屋さんの、キョンはあたしのを運んでもらうわよ。」 何だそんな事でいいのか、確かに面倒だが定番ちゃあ定番だな。朝比奈さんもほっとした様に大きく息を吐い ていた。 「た・だ・し、みくるちゃん。あなたはそのメイド服のままで荷物持ちをしなさい!!」 「え?え!?な!?なんでですかぁ?何でわたしだ「黙りなさいっ!」 「ひぇっ!!」 割合…いや、むしろかなり真剣な顔で朝比奈さんを睨むハルヒ。 「何でそうなるのか自分の胸に手を当てて考えなさい!」 とても困惑して、震えている朝比奈さん。そしてそれを睨むハルヒ。古泉が後ろで止めようかどうか迷ってい る様だった。長門でさえハルヒと朝比奈さんをじぃっと見ていた。 そして暫くして朝比奈さんはハッとした様だったが直後に俯いてしまった。 「おいハルヒ。あんまり朝比奈さんを脅かすなよ。泣きそうじゃねぇか。」 ハルヒはそう言った俺をキッと睨んだが、暫くして俯いて何かぶつぶつつぶやき出した。 「……なによ……いっつもいっつも…みくるちゃんの事ばっか………」 なんだ?よく聞こえん。 「なんだって?何て言ったんだ?」 「何でも無いわよ!このバカキョン!!さっさと帰るわよ!荷物持ちなさい!!」 と言ってハルヒは俺に荷物を押し付けて部室を早足で出てった。俺は朝日奈さんと鶴屋さんに一礼してハルヒ を追いかけて部室を出て行った。 「おい待てよハルヒ。」 俺はハルヒに追いついて声を掛けたがハルヒは黙って俯いて歩いていたので、しょうがないので俺も黙ってつ いていった。 暫く歩いてハルヒは突然立ち止まった。 「家…此処だから。」 ハルヒはそう言って黙って俯いたまま手を差し伸べてきた。ああ荷物か… 「ほらよ。」 俺はハルヒに荷物をわたし、そのまま帰ろうとした。 「あんた…笹とりの時にみくるちゃんと何やってたのよ。」 何言ってんだコイツは。 「だから、崖から落ちて動けなかったって言っただろ。」 「そんな事聞いてんじゃないのよ!!!」 ハルヒはぐわっと顔を上げていった。 「あんた……みくるちゃんと…抱き合ってたじゃないのぉ!!」 なっ!?コイツ見てやがったのか!?一体何で!?何処で!!? よく見るとハルヒの瞳からは大粒の涙が次から次から零れ落ちていた。 「何なのよ!!何のつもりなの!団活中にいちゃついてんじゃないわよ!!ふざけてんじゃないわよ!!…い っつもいっつもみくるちゃんの事ばっかり…」 「………」 俺は何も言い返すことが出来なかった。ハルヒはさっきより更に大粒の涙をボロボロと目から零していた。 「…あんた……みくるちゃんの事………」スッ…ドサッ ハルヒはそこまで言うと急にそこに倒れてしまった。 「な!?おい!ハルヒ!!ハルヒ!!どうしたんだ急に!!おいっ!!」 「…………」 しかし、ハルヒはまったく返事を返しはしなかった… 「ハルヒ!ハルヒ!しっかりしろ!!くそっ!」 しかし幸か不幸か此処はもうハルヒの家の前だ。 俺はハルヒを抱き上げてハルヒの家のドアを開けた。 …ガチャ… よかった。鍵は開いてるようだ。ハルヒの部屋は…此処か。 俺はハルヒをベッドに寝かせると一息ついた。改めてハルヒの部屋を見渡してみる。ふむ、以外にも普通の部 屋だな。ん?なんだこれ。 ハルヒの机の上には小さな笹があり。そしてその笹には1つの短冊がぶら下がっていた。なんて書いたんだろ うな。 「どれどれ?うちの団長様は今年は一体何を願ってるんだろうな。」 俺はそれを裏返した… 「はぁ…まあそんなこったろうと思ったがな。」 そこにはこう書かれていた。 『ジョンに会いたい』 どう考えたってこの願いは危険すぎるんじゃないか? すると突然背後から声が聞こえた。 「ジョン…」 な!?ハルヒ? 突然ハルヒの声が聞こえ、俺はハルヒのほうを見た。しかしハルヒはまだ眠っていた。 何だ…寝言かよ。 「寝言なんかじゃないわ。こっちよ。」 は!?その声は何故か部屋の入り口から聞こえ、当然俺は振り向いた。そこには… 「何なんだよ…お前、一体何なんだよ…」 そこには、もう1人…ハルヒが立っていた。 ……… …… … それは7月7日の夕方…そこはある国のある都市のあるビジネスホテルのある一室での出来事。 …コンコン…「失礼します。お呼びでしょうか、森さん。」 「一樹くん、今日は仕事じゃないのよ。いつもみたいに呼んでよ…」 「これは失礼を、園生さん…」 「一樹くん…」 部屋の奥のベッドの上で古泉と森は一緒に横になっていた。 「一樹くん、ここからは仕事の話よ。」 「そろそろくる頃だと思っていましたよ…どうぞ。」 古泉は一瞬寂しそうな顔をしたが、森を困らせまいとすぐにもちなおした。当然森も古泉のその気持ちもわか ていたし、自分も同じような気持ちであったが、仕事では仕方ないとゆう事も分かっていた。 「はい、あなたに新しい任務に就いてもらいます。本来は新川に頼む予定だったのですが、知っての通り、体 調が優れてはいません。」 「そうですか。」 この時森は気付いていなかったが、古泉はニヤリと不気味な笑みを零していた。 「判りました。それで、任務の詳細は?」 「はい、あなたの新しい任務は………キョン氏の暗殺です…」 涼宮ハルヒの方舟 第3話 ~もう1人~ おわり ~次回予告~ キョン「はい、じゃあ今回は一回目と言う事で俺が予告をするぞ。」 突然現れたもう1人のハルヒ… 「『あたし』はジョンに会いたいのよ!」 そして俺の暗殺の任務を受けた古泉… 「残念ですが、SOS団はもう終わりです………死んでください。」 夕方の公園で俺と並んで立つ長門… 「貴方は我々の計画の邪魔……消えてもらう…」 涙にぬれる朝比奈さん… 「本当はこんな事したくはないんです!!キョンくんといつまでも一緒に居たかった!!それでも…それでも わたしに禁則事項の暗示がある限り組織の指令に逆らう事は出来ないんです!!!」 果たしてもう1人のハルヒの正体とは一体、そしてSOS団の運命は… 次回『涼宮ハルヒの方舟 第4話 ~計画~』 キョン「いや~、一体どうなるんだろうな~。俺、生きてまた予告できんのかなぁ…」 ???「それは不可能ですよ…」 キョン「な!?誰だ!お!おまえは…わ!わ!やめ……アッー」 ???「マッガーレ」 さて、次回の次回予告は誰がやるんだろうな… 第4話へ
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4月のある日曜日、俺は自宅近くの公園でバスケをしている。何故唐突にバスケなんぞをやっているのかと言うと、実は中学2、3年の頃バスケをやっていたからだ。言っておくが、部活でやっていたのではなく、当時俺の学年でとあるバスケ漫画が爆発的に流行り、 それまでバスケをやったことのないやつらも休み時間にバスケをするようになったので、ご多分に漏れず俺もバスケをやり始めたのだ。バスケ部の連中にドリブルやシュートのテクニックを教えてもらい、受験の為に塾に入らされるまでずっとやっていた。 そして今日。暖かな春の陽気に誘われて、物置からすっかり埃をかぶったボールを引っぱり出して、20分ほど前からシュートを打ち続けている。2年近く運動から離れていたにも関らず、意外にも体はスムーズに動いてくれる。いや、この1年間は酷使してきたのか?あいつに出会ってから。 なんて考えたのがいけなかったのか、 「あら、キョン。珍しいわね。バスケ?」 向こうからハルヒがやってきてしまった。 「おまえが今日、SOS団を休みにしたことよりは珍しくねぇよ」 「今日はちょっと用事があるのよ」 ここの近くでか?と尋ねると、ハルヒは顔を右に逸らし、 「そ、そうよ。あんたの家の近くに用事があっちゃ悪い?」 と妙に早口で言った。しかし、俺の家の近くで宇宙研究員によるアールグレイ身体解剖展覧会でもやっているのだろうか。 「あんた、あたしを何だと思ってるわけ?」 ハルヒは渋面をつくり、俺を睨んでいた。光線でも出るんじゃないのか? 「そんなことより、キョン。あたしと勝負よ!」 何の勝負だよ。 「それに決まってるじゃない」 そう言って、俺が小脇に抱えたバスケットボールを指し、 「もちろん、負けた方がジュース奢りよ!」 笑顔で罰ゲームを決めた。別にかまわんが、何点先取だ?俺がそう問うと、ハルヒはフフンと鼻を鳴らし、 「相手が参りましたと言うまでっ!」 団長様のご好意により、俺の先攻になった。ハルヒは余裕そうな表情で、 「あ、もちろんあんたはポストアップ無しよ」 わかってるさ。だがな・・・ 「ハルヒ」 「なによ?」 「俺は結構うまいぞ」 試合開始。 もう何本目かわからない俺のシュートがネットを揺らす。 「もーっ!セコい!ペテン師!卑怯者!」 そうハルヒが喚いているが、それに当たるプレーはなにひとつやっちゃいない。運動神経抜群のハルヒが相手なので、多少本気は出したが。 「もう疲れた!キョン、何か飲み物買ってきてちょうだい。甘ったるくないヤツね」 罰ゲームはどこいった。それに俺だって疲れたし、喉も渇いた。 とは言わず、へいへいと平返事をして自販機で適当なスポーツドリンクを2本買ってきた。 お互いにべンチに座ってそれを飲んでいると、 「あんた、バスケできるのね。意外だわ。天動説が実は地動説だったことよりも意外よ」 後半の感想はわかりかねるが、前半だけなら納得だね。 「いい汗かいたし、そろそろ帰るわね」 そう言って立ち上がるハルヒ。 そういえばハルヒ、なんか用事があったんじゃないのか?ハルヒはギクリという擬音が見事にハマりそうなリアクションをして、 「あ、えーっと・・・うん、そう。そうなのよ!この用事、本当は来週の予定だったのよ!」 おいおい、しっかりしろよ。その歳でボケて年金生活をどう乗り切るつもりだ。しかも明後日の方を向いて、妙に挙動不振だし。 「何でもないのよ!じゃあ、また明日ってことで!」 最後まで挙動不振だったな、なんてハルヒの行く末を心配しつつ空きカンをゴミ箱に投げ入れた。 結局ハルヒの用事が何だったのかは、次の週になってもわからなかった。
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第二章 俺の安らかな眠りを妨げる者は誰だ。 目覚まし時計が朝を告げる音を軽やかに鳴らす。 朝特有の倦怠感と思考の低下は、俺の1日の始まりである。 不機嫌な状態で居間へ下り、テレビを観てハッとする。 「8 45」 あれれー? 急いで洗顔を済ませ、歯を磨き、着替えて愛車にまたがる。今日は朝飯抜きだ。 「待て。」 「あ?」 振り返ると1人の男がいた。俺の全神経が集中する。この自嘲的な笑みが憎たらしい。 こいつはいつぞやの俺と朝比奈さんの邪魔をした未来人っぽい奴。 「生憎、俺は男に興味は無いのだが。」 「忠告しに来ただけだ。死にたくないなら、今日は行くな。」 「お前を信用出来ない。お前は俺の敵だろ。」 「知るか。俺の敵は朝比奈みくるだ。」 「朝比奈さんは、俺の見方だ。その敵は俺の敵でもある。」 「まあいいさ。規定事項で近日中にお前は死ぬことになっている。」 ますます嫌な事言うな。「俺はその規定事項を破る為に来た。 お前の存在が与える影響は大きい。お前は未来にとって必要な鍵だ。失うわけにはいかない。 信じる信じないはお前の勝手。俺は勝手に動く。」 そう言ってあいつは俺に背を向け、どこかへ消えた。 駅前に到着する頃には、当に9時を過ぎていた。 「あんた、遅れたら死刑だって知ってる?」 ニゲタイ。デモ、ニゲラレナイ。 目の前の鬼は、表面上は笑顔を取り繕っているが、体から放つオーラが半端じゃない。 「さぁ今日は沢山食べるわよ~♪」 あぁ、不況が続く。 古泉が小声で話し掛けてくる。顔が近い。 「長門さんに頼んで、今日はあなたと涼宮さんを離します。事態が収まるまで続けますよ。」 いつ終わるんだよ。一生はないよな。 「大丈夫。人の記憶は短いですよ。彼女も直ぐ忘るはずです。」 その後ハルヒは、飯まで食いやがった。俺の金で。 「いいじゃない。あんたも食べてるし、遅刻した罰よ。」 それは目覚ましの………もういい。悲しくなる。 さて、くじ引きの時だ。古泉によれば、長門の力で俺とハルヒを離すらしいが…… 「では、僕から。」 古泉はそう言いながらくじを引く。 「印付きです。」 「………」 無言で長門が引く 「印付き。」 そう言い終えると飲みかけのサイダーを音も無く吸い出す。 「次はあたしね♪」 ハルヒが引く 「印無しよ。」 「じゃあ、次は私が。」 朝比奈さんが引く。 くじを前に悩む顔が可愛らしい。何引いたって結果は同じさ。 「印付きです。」 朝比奈さんは柔和な顔で俺にくじを見せた。 とても和みmあれ? 今回はハルヒと一緒。確か俺はハルヒ以外と組むはずなのでは? 古泉を見ると口をあんぐりさせ、長門の方を見ている。 一方、長門はといえば無表情のままだが、どこか情緒不安定に……見えないな。 「さぁ!!行きましょう。」 太陽も引っ込むような笑顔で、ハルヒは俺の手を引っ張り、外へ出ようとする。 その姿はまるで、クリスマスイブにプレゼントを買って貰えるとはしゃぐ、子供のようだった。 俺は金が少ない。会計は古泉に任せてとんずらする事にしよう。 外へ出た俺とハルヒだが、特に行く所も無く、 「何処行くか?」 「ん~あんたの好きな所でいいわ。」 「じゃあ、ゲーセンでも行くか。」 ハルヒしばらく考えた後「いいとこ目つけたわね。そういう場所には宇宙人とかがいるのは定番だし。」 どこが定番なんだろうか。やけに上機嫌なハルヒはドカドカと道を歩み出した。 どうでも良いが、街のど真ん中で鼻歌は止めてくれ。一緒にいる俺まで恥ずかしい。 すると、急に俺の携帯が鳴りだす。古泉からのメールだった内容は… 『先ほどはよくも、逃げて頂きましたね。代償は大きいですよ。 ところで本題ですが、詳しい話は後ほどにでも 現在はお2人を後ろから監視してます。 何かあったら直ぐに駆けつけますので御安心を P.S 良いデートを。ただし、密室は避けること。』 なにが『良いデートを』だ。殴ってやりたいね。いや、殴ってやる。 まぁ密室は避けるべきだな。俺の命に関わってる事だし。 だいたいこんな事になったのもハルヒの妄想電波のせいであり…… 「何してるの?早くついてきなさいよ!」 やれやれ、死のカウントダウンが始まったようだ。 助けてくれ親愛なる仲間たちよ。 十分後、近くのゲーセンに着いた。ハルヒは真っ先に近くのゲームをし始める。 ふと、俺の携帯が呼び出しをしていることに気づく。 長門からだった。 「長門か?」 「トイレで待つ。」 俺は曖昧な返事をして電話を切り、トイレへ向かう。ハルヒに言う必要はない。 トイレの前に古泉はいた。嫌な予感がする。 にやけ面が口を開く。 「どうも。」 「説明してもらおうか。」 「それはですね…」 一呼吸おき、 「や ら n」 「古泉。お前が泣くまでッ殴るのを止めないッ。」 「何もそこまで……アッー!!」 トイレの中で古泉を張り付けにした後トイレの外で長門と朝比奈さんに会う。 「あれ?古泉くんは何処ですか…?」 今頃トイレでキリストになってますよ 「きりすと?」 首を傾げて朝比奈さんは言った。今更だが、朝比奈さんの知識は俺達とかなり異なるみたいだ。 だがしかし、未来人として、歴史を知るという事は重要ではないのか? これがゆとりの力だろう。 「簡単に言ったら救世主ですね。確か一度死んで復活したとかしないとか。」 「宗教的ですねぇ。」 宗教ですからね… 「説明する。」 キリストならもう俺が話したが? 「そちらの方をして欲しい?なら、説明する。 彼が何故救世主と崇められたのは、彼の弟子のユダの裏切りにより…」 「もう結構です。」 「……そう。」 「要点だけ言ってくれる?」 キリストの話じゃないぞ 「結論から言う。私の力が働かなかった。」 「どういう事だ?」 長門の力が働かない? 急進派の陰謀で俺を殺すためとか? 妨害電波の発生か? 四次元ポケットの故障か? 「どれも違う。これは涼宮ハルヒが求めたからである。彼女の力が私の力を上回っただけの事。」 ハルヒが望んだ? 「そうです。彼女がそう望んだのです。羨ましいですね。私もあなたと一緒にいt……ぎゃあ。」 古泉。てめぇ、いつ抜け出しやがった? 「あ、あああ朝比奈さんに助けて頂きました。」 「ふぇ…いけませんでしたか?」 そんな事御座いません。あなたの決定は俺にとって絶対ですからね。 「で、俺はどうすれば良い。」 「………特に無い。」 「ただし、付かず離れずを保って下さい。」 付かず離れず? 「涼宮さんの興味をあなたに引きすぎてもダメ、逆も同じです。」 どうして? 「つくづくあなたは鈍感ですね。本当は気づいているのでは?」 古泉の溜め息が響く。 「………のろま。」 長門まで何を。しかし、まっったく解らん。 「乙女心ですよっ。男のキョン君には、解らないんですね♪」 男の古泉が乙女心を知っているのが不思議なのだが。 朝比奈さん…そんなに嬉しそうに言わないで下さいよ。馬鹿って言われてる気分です。 「これ。」 長門は小型のチップを手渡した。 「発信機。見失っても安心。」 「では、これで。」 3人は俺に会釈(長門は一瞥)をして出て行った。 何故かは知らんが「のろま」という言葉だけ俺の耳に残る。 俺は亀ではない。 渋々ハルヒの所に戻る さて、ハルヒは何か景品を取ったらしく、 「これ、要らないからあんたに一個あげるわ。携帯にでもつけなさい」 俺はハルヒからツキノワグマのぶーさんのキーホルダーを貰った。 「変な趣味だな」 「う、うっさいわね。嫌なら返してよねっ。」 ハルヒから不機嫌オーラが出てくる。 ここは、受け取るべきだな。 「いや、有り難く頂きますよ団長さん。」 「そっ…それならいいのよ。初めから欲しいって言えこのバカ!!」 ハルヒは怒ったような、悲しいような、だけど嬉しそうな…とにかく、滅茶苦茶な表情をしていた。 本当、何が言いたいのかね。 「さぁ、次やるわよ!」 ハルヒはいつもの表情に戻るや否やクレーンゲームに興味を示した。 まぁその辺の詳しい事は割愛させて頂く。 ハルヒはまたぶーさん人形をゲットし、他のアーケードゲームに興味を示す。 勿論、俺も参加する。まぁ、その辺はどうでもいい。問題はその後だった。 とりあえず、長門達が見つかった。 ハルヒが「プリクラを撮るわよ!」とか言って中に入ろうとしたからだ。 普通、誰か居るの確認するだろ。 その後古泉が、「おや?奇遇ですね」などと抜かし、すたこらどっかに消えて行った。 「やっぱりね。」 何が「やっぱりね。」なんだ? 「今までずっとつけられてたのよ。気づかなかった?」 生憎、俺には気を探る能力や、どこぞの宇宙人が持つスカウターは持っていないからな。 「今までの全部見られてたのよ!!恥ずかしいったらありゃしない!!」 「おお、キョンと涼宮じゃないか。」 谷口がいた。変な奴に見つかったな。 「遂に2人でデートか?アツアツだねー。」 「な、何よ。冷やかしに来たの?」 ハルヒは頬を赤らめた。俺だって恥ずかしい。 「あら、その手に持っているの何?」 「あぁこれか。早急拾った………なぁ。」 「どうしたんだよ。」 谷口は俯きながら何か躊躇するような姿勢をとる。 「俺ら友達だよな。」 「は?当たり前だ。」 「涼宮は?」 「一応一緒のクラスだし、友達でもいいんじゃない?何なら下僕にしてあげてもいいのよ。」 ハルヒはニヤリと小悪魔みたいに微笑む。 「ハハハ…お前らしいや。ホント良かったよ。お前らが仲間で。」 「お前何言ってるんだ?悩み事ならh……!!?危ねぇ!!避けろハルヒ!!」 谷口の手が光る。あれはナイフだ。それがハルヒに向けられる。 「……え!?」 間に合え!! 俺はハルヒからぶーさん人形を引ったくり、ハルヒを突き飛ばす。 そしてそれを谷口へ向ける。 ナイフはぶーさん人形に突き刺さった。 「谷口ィィィ!!!てめぇ……よくもッ!!」 俺は吹っ切れた。渾身の力で谷口へ殴りかかる。 その手を誰かが止める。古泉がいた。 「いけません。」 止めるな。こいつはハルヒを……… 俺は必死に足掻く。 「彼を見て下さい。もう何も出来ません。」 谷口は自分の手を見て目を疑っていた。 「AWAWAWA……俺……何してんだ?何で……何でこんな事を………ゴメン………ゴメン。」 「落ち着いて下さい。さぁ、ここは人目につきます。外へ。」 横で呆然としていたハルヒを抱え、外へ出る。 その後ハルヒはぐったりとしていたが直ぐに眠りに落ちた。 古泉が誰かに電話をしている。どうせ機関の誰かだろう。 程なくして車が来る。森さんだった。 古泉は谷口を車に乗せる。 「わたしも行く。」 長門も車に乗り込み、車は発車する。 「何で警察じゃないんだ?」 谷口は立派な殺人未遂犯である。警察に突き出すのが当たり前だ。 「気付きません?」 「……ナイフ。」 朝比奈さんが感づいたように呟く。 「まさか谷口……」 その先は言えなかった。悲しすぎた。言うに耐えなかった。 「ええ、ご想像の通りでしょう。」 また車が来た。今度は新川さん。 「涼宮さんとどうぞ。家まで付き添ってあげて下さい。」 ハルヒを抱え、車に乗る。 「古泉。」 「何でしょうか。」 「お前の力凄いな。俺の本気が簡単に止められたのは初めてだ。」 「ふっ、知ってますか?オカマやゲイが強いのは定番なんですよ。」 不思議な名言を残し、古泉と朝比奈さんは手を振る。 「宜しいですかな?」 「お願いします。新川さん。」 車は発車する。 「キョン……」 起きたかハルヒ。 「うん……助けてくれてありがと。」 ハルヒはまだ朦朧としている。 「大丈夫だ。俺がついている。」 ハルヒは急に瞼を全開にして、赤くなる。 「そ、それって…」 「何たって俺はSOS団の雑用係だからな。」 ハルヒは機嫌を損ねたようで、俺のふくらはぎをつねる。 俺何か悪い事言った? 「目覚めたなら頭どけてくれるか?膝枕は意外に疲れるんだ。」 「……バカキョン。」 すると、俺の頬に生暖かい物体が触れた。 ミラーに写る新川さんがにやけていた。 「………お礼よ。」 「………そっか。」 あ、自転車忘れた。 第三章へ
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俺は春休み前から思っていた。 高校に入ったら、自分を変えてみようと。 ただ、決心するのはまだかかりそうだ。 なんたって、野球部に入ったのはいいが、俺はいまだにロングヘアーだからな。 まあ、男の場合はロン毛と略したほうがあってるかもしれない。 とりあえず、ピアスは外した。 しかし、まだ坊主にする勇気がもてなく、いまだにロン毛だ。 どうやら、仮入部中は坊主にしなくていいらしいので、まだ仮入部の状態。 そろそろ、切ろうとは思うのだが・・・。 ところで、今俺は先輩達がバシバシ放つボールを拾っている。つまり、球拾いだ。 ありきたりすぎる。しかも、ここ何日かずっと。 と、そんな俺の横にいるのは、今日仮入部してきた、俺と同じクラスの女の子、 涼宮ハルヒ 普通、他人がどんな自己紹介をしたかなんてすぐに忘れてしまうだろうが、この子の自己紹介はすこし衝撃的。 後、10年は忘れそうにない。 ところで、何で女の子なのに野球部なんだろうな? ソフトボール部に入ったらいいのに・・・ と思って、言ってみたのだが、 「そこには昨日仮入部したわよ。あんたのせいで、最後の1点とれなかったけどね」 と、睨まれながら言われた。 ああ、あれ試合中だったのか。 そんな感じは、確かにしたんだが・・・ 球拾いをずっとしてたから、そのまま返しちゃったんだよ。 「ソフトボールも野球も似たようなもんだと思うけど」 「あんたには関係ない」 なんか分かんないけど、怒られた。 ところで、いまだに球拾いか筋トレしかやってないんだが、いつバットを握らせてくれるんだろうね? まあ、仮入部の俺がそんなこと言えるわけがないが・・・ というより、仮入部の人までこんなことやらせるのはどうかと思う。 仮入部生にまでそんなことさせたら、その生徒がやめたくなるぞ。 もちろん、そう思ってるのは俺だけじゃないらしい。 隣の女の子も、先ほどからイライラオーラを出している感じだ。 多分、そろそろやめるだろう。聞いた話によれば、毎日、行く部活を変えてるらしいからな。 球拾いばかりで面白くないと分かったはずだ。 と、思ったのだが、そう思っていると部長がこちらへやってきて、 「お前ら、これつけろ」 と言いながら、グローブが山のように詰められているダンボールを持ってきた。 「適当に二人一組になってキャッチボールしろ」とのことだ。 キャッチボールか・・・どことなく懐かしい響きだ。 さて、誰と組むか・・・ 「一緒にやる?」 「別にいいけど」 ということで、俺はこの涼宮ハルヒという女の子とキャッチボールをすることになった。 他にもこの女の子とやろうとしてた人がいるらしいが、多分、俺はそいつらと同じ理由でこの子を誘ったのではない。 ただたんに、近くにいたから・・・それだけだ。 でも、やることになったのはいいんだが・・・。 「……」 「……」 会話がない。 いや、普通、部活中のキャッチボールは話しながらするものではないが、何か言わなきゃいけない気もする。 「あの、俺の名前知ってる?」 「知らないわよそんなこと」 「花瀬。同じクラスなのは知ってるよね?」 「だから知らないって言ってるでしょ」 ・・・・・この子はどうやら、人と話すのを嫌うらしい。 それとも、ただたんに苦手なだけなのか? 「そういえば、入学式の自己紹介だけど・・・」 「あんた何か知ってんの?宇宙人?」 「いや、どこまで本気かな?と」 「・・・あんたもそれ。どうせ、何でもないんでしょ。だったら話しかけないで」 「ごめん」 自分でもなぜ謝ってるかが分からない。 「あっそうそう、言い忘れてたが、50回したらこっち戻って来い!」 やばい!数えてなかった! 「31回目」 ・・・怒ったような口調で言ってくる。 どうやらこの女の子は意外とマジメらしいな。 その口調とかなおせば、かわいらしい感じになるのに。 「50回やったけど」 「じゃあ戻ろうか」 で、戻ろうとした時だ。 先輩が打った球がこちらの方向に飛んできて、そのまま来ると涼宮さんにぶつかってしまう。 と思ったと同時に、俺はその女の子の腕をつかみ、こちらに引き寄せて、ボールを避けた。 よかったぶつからなくて。 ・・・と、思ったのだが、その拍子で、しりもちをつき、しかも腕をつかんだまんまだった。 この状況を詳しく説明しなくても、分かってもらえたらうれしい。 これまた、よくあるパターンだ。 「何すんのよ!!」 「グハッ!」 腕をふるい、そのままおもいっきり腹を蹴られた。痛い。 とりあえず、説明しなければ。 「だって、君あのままだとボールに・・・」 そう言ってくれたら分かってくれると思ったんだけど。 「あれぐらい自分で避けれるに決まってるでしょ!あたしは掴もうと思ってたけど」 ・・・かなりまずいことをしてしまったようだ。 今度はグローブを投げつけられた。痛い。 まだ、バットじゃなかっただけよかったと思うべきなのかもしれないけど。 「つまんないし、あんたみたいな男もいるみたいだからさっさとやめる」 はい、ごめんなさい。できたらもうちょっと早くやめていてほしかったです。 それから、その子は教室に戻っていった。 「お前、何、女押し倒してんだよ!!」 いや、そのつもりはなかったんですけどね・・・ とりあえず、俺は必死になって先輩とか、同輩とかに事情を説明。 分かってもらえたかは分からない。 でも、今日、一つだけ分かったことがある。 あの女の子には近づかないほうがいい。
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翌朝、俺はいつものように妹の強烈なボディーアタックを食らって目を覚ますという一部の人間にはうらやましがられそうな目覚めを演じた。しかしもちろん俺が自分をうらやむわけもなく、感慨もへったくれもないような目覚めでありよってまったく爽快な気分はしない。 爽快な気分がしないと言えば我が家の飼い猫シャミセンも完全にだらけモードで床に寝そべっている。夏の暑さにすっかり気怠くなったのだろう。 どうしてやろうかとシャミセンを見て思案する俺だったが、俺が起こしてやる前に妹によって抱きかかえられ、反抗の意思表示も軽く無視されて妹の『ごはんのうた(新バージョン)』とともに階下へと連行されていった。 朝起きたら世界が変わっていた――とかいう冗談みたいな事態になるのは絶対に避けたいものの、ならばそれをどう回避するかという問題であり、もしかすると俺は避けるよりも変わった世界を元に戻すほうが素質があるのではないかという結論に達するわけである。朝から何を言ってるんだ、俺は。 しかし、実を言うとそれは事実かもしれん。なにしろ十二月あたりに俺はそんなことを経験しているからな。 しかしまあ、そうそう世界も変わるもんじゃないだろうというのが俺の楽観的な考えである。この世界の神様だってそこまでこの世界に住んでいる人間(とりわけ俺)に理不尽な設定を押しつけるわけはないだろう、と。もっとも、あの時世界を変えたのは神様じゃなくて地球外生命体だったのだが。 朝食を食っている間、俺はそんなアホなことを考えていた。 一日の始まりというのは当然ながら自分の家にいるわけで、ということは学校の俺の後ろに誰が座っているのかは朝の時点では解らないのである。 無論、そこにいるのがカナダに転校したことになってるヤツだったらそれはもう悪夢以外の何者でもなく、今すぐ110通報してそいつを捕まえておくとか大量の保険に加入しておくとかしないとならないだろう。 ありがたいことに、あの日以来今のところそういうことにはなっていないが。 何と言っても俺が自分の教室に着いたとき、俺の後ろの席に我が団の団長が座っていてくれればそれほど安心できることもない。 そして、今日もそうだった。 谷口や国木田連中と一緒にひーこら言って坂を登り、二年五組の教室で不機嫌なオーラを放出して机に伏せているハルヒの姿を確認できたとき、俺はああ今日も無事らしいなということを悟った。 悟った、が。 俺はすぐに、今日が無事と言えるほど無事な状況ではないことを認識し直すはめになるのだった。 * 今日は特に暑かった。 昨日のように湿度を上げて嫌がらせ攻撃を仕掛けてくることはなかったが、今日は純粋に太陽光の威力が強い。誰かが太陽の表面にせっせとガソリンを注いでいるんじゃなかろうか。 「まーったく暑いわねっ!」 ハルヒの機嫌もさらに下方修正が施されているようだった。そのセリフも今日だけで三度目くらいである。朝のホームルーム前からこの状態では、午後には機関銃並の速度でグチをたれていることだろう。 「年々気温が上昇してるんだから、もっと早くから夏休みにすべきなのよ。いつまでも昔のまんまじゃ日本の社会は進歩していかないわ。これじゃあ予定が狂っちゃうわよ」 高校生の夏休みの長さに日本の社会を持ち出すのもどうかと思うが。 「その予定ってのは何だよ。俺はまだ聞かされてないぞ」 「夏休み前から文化祭映画の撮影をやるつもりだったの。去年みたいに秋に始めてると毎日すっごく忙しくなっちゃうからと思ってあたしなりに配慮したつもりだけど、でもこの暑さじゃ無理よ。外に出たら四秒で丸焼きになるわ」 むしろ好都合である。 「じゃあいっそのことやめちまおうぜ。この分だと文化祭までずっと酷暑だ。今年の文化祭は映画をやめてバンドだけで充分じゃねえか」 「ダメよ、そんなの。せっかくみくるちゃんで客寄せできるチャンスだもの。逃す手はないわ」 たとえ一年前に調子づいた拍子で言ったことでも、言ったことは必ずやり通すのが涼宮ハルヒ流である。早い話、メイワクだ。 そう、つまり今年も我がSOS団では去年に引き続き映画を撮ることになっているのである。 去年の映画のタイトルというのが『朝比奈ミクルの冒険 Episode 00』であって今年はその続編である。題名は確か、『長門ユキの逆襲Episode 00』だったっけ。作品名には長門の名前がクレジットされているものの内容は去年と同様に朝比奈さんのPVに相違なく、ハルヒは本気なのかもしれないがそこにストーリー性は皆無である。カメラマンの俺はまだいいが、高校三年生になってまでセクハラウェイトレスの扮装をさせられて幼稚園児のケンカよりもショボいと思われる戦闘シーンを演じなければならん朝比奈さんを思うと涙が出てくるね。 俺は二つ目の案を提示した。 「ならバンドのほうをやめようぜ。俺はギターなんか弾けないしボーカルなんてもっと無理だ。映画かバンドか、どっちかにしてくれ」 「ダメよ。去年は映画だけだったんだから今年は二つやるわ。来年はきっと三つやるわよ」 「来年のことはいい。しかし俺は本当に楽器なんて何もできないんだ。だからバンドはやめてくれ。あるいは、俺を除いた団員だけでやってろ」 この会話から解るとおり、呆れたことにSOS団は今度の文化祭で一般参加のバンドにまで出演する予定である。SOS団、というからにはその中には高確率で俺も入れられているのだろう。 映画のスクリーンならカメラマンである俺は映ってないからともかく、生のライブであるとうなら俺も否応なしに素顔を公表しなければならず、そうなったら最後校内だけでなく俺の近所にも俺がSOS団なる珍妙な団体に所属しているということが知れてしまう。それだけは阻止せねばならん。 しかしハルヒに意見を変えるつもりは蚊の針の先ほどもないようだった。この迷惑女は暑そうにセーラー服の胸元を手でパタつかせながら、 「何言ってるの。あんたにだってできるやつはゴマンとあるわよ。みくるちゃんと一緒にタンバリン叩いてたっていいけど、それよりもあんたには舞台の隅でカスタネットでも叩いてるほうがお似合いね」 嫌だね。なおさら嫌だ。 ――それは何の前触れもなく訪れた。 俺がどう反論の意を唱えようかと考えていると、ハルヒは次のように宣言したのだった。 「とにかく、あたしは一度言ったことをひっくり返すつもりはないわ。今年はバンドをやるし、映画も『朝比奈ミクルの初恋Episode 00』を上映させるからね!」 ハルヒは確かにそう言った。 お気づきだろうか。しごく当然のように言ってのけたため聞き流してしまいそうだったが、俺の耳及び危険レーダーはそれをしっかり察知していた。 一瞬聞き間違いかと思ったが、俺は自分の耳をそれなりに信用しているつもりである。 あれ? ハルヒは何と言った? 「こらキョン、せっかくあたしがカッコいいこと言ってるのに、あんたの今の顔はいつにも増してマヌケ面よ。写真に撮って収めておきたいくらいだわ」 いや、そんなことはいい。俺のマヌケ面写真を撮ってもせいぜい後世SOS団員の笑いのタネにさせられるだけだろう。それよりも、 「すまんハルヒ、もう一度映画のタイトルを言ってくれないか? ちょっと違ってたような気がしてな」 「『朝比奈ミクルの初恋Episode 00』よ。あんたまさか忘れたの?」 はあ? 『朝比奈ミクルの初恋Episode 00』だと? そんなもんは知らん。今年やるのは『長門ユキの逆襲Episode 00』だろうが。わざわざインチキな予告編まで作らされたんだから俺が間違えるはずはないぜ。それともハルヒが勝手に題名を変更したのか? 「はあ? って言いたいのはこっちのほうよ。『ナガトナントカのナントカ』なんて一度も聞いたことないわ。今年やるのは『朝比奈ミクルの初恋Episode 00』で、最初から変わってないわよ。予告編も作ったじゃない。寝ぼけてるようなら殴って起こしてあげるけど、どう?」 何を言うか、俺はしっかり起きている。 「起きてるわけないじゃないの。だいたいそのタイトル……何だっけ、もう一度言いなさい」 「『長門ユキの逆襲Episode 00』」 「それはどっから湧いて出たのよ。そもそもそのナガトユキとかいうのは何? 人の名前?」 ハルヒはしごく真面目な顔をしている。 おいおい、自分で考えた映画の題名を忘れたと思ったら今度は長門のことを忘れたとしらばっくれる気か。冗談なら冗談っぽく言わないと人には伝わらないぜ。だいたいそんな冗談はお前的に「笑えない」冗談に分類される気がするぞ。 「あたしは冗談を言った覚えなんかないわ。だってナガトユキなんて一度も聞いたことないもの。何、あんたの中学の時とかの同級生?」 そんなバカな。 「長門有希だ。知らないのか」 背中に若干冷たいものを感じる。まさかとは思うが……。 「知らない。あんたにそんな知り合いがいたの? どんな娘、そのナガトユキとかいう娘は。何か特殊能力があったりする?」 「うちゅ――」 う人とつなげようとして危うく思いとどまった。 「SOS団のメンバーだろうが。そして、たった一人の文芸部員だ」 一番最初に長門から受けた無機質な視線や機械的に動く指を俺は一生忘れない自信がある。そんなのは正体を知っていようがいまいがハルヒも同じはずだ。 さあハルヒ、俺の平常心をもてあそぶつもりで言った冗談ならそろそろやめにしてくれないか。そういう悪質な冗談は俺の過去の体験も手伝って見えざる第六感を刺激してくれるのでね。 しかしハルヒは心底呆れたような顔をしており、そしてとうとう、嫌な予感のしている俺にとどめを刺した。 「SOS団ってあんたねえ。本当にどうかしてるんじゃないの? SOS団は一年生の四月あたりからずっと四人だけでしょ」 俺の頭を強烈なショックがぶっ叩いた。 ありえん。 ハルヒ、俺、長門、朝比奈さん、古泉。どう考えたって五人だ。これが冗談だというならそれは長門に失礼だぜ。もし本気で言ってるなら、ハルヒの頭か世界が狂ったんだ。 「バンドは」 俺の出した声は心なしかかすれていた。 「去年、文化祭のENOZのバンドでギターをやってたのは誰だ」 「三年生の人、中西さんとか言ったかしら」 そんははずはない。 「映画はどうだ。去年、俺らが文化祭でやった映画で朝比奈さんの敵を演じたのは誰だ。黒衣纏って棒を持ってた奴だ」 「谷口」 あっさりと答えやがる。くそ谷口め。お前は脇役の脇役で水中ダイブでもしてればよかったんだ。お前に長門役を務められるほどの力量はないぞ。 などと言っていても仕方ない。 冗談であるという可能性を俺が信用できないのはハルヒの顔を見れば解る。こいつは友人が覚醒剤中毒者だったと知らされたばかりのような呆気にとられた顔をしてやがる。こんな顔は見たこともない。 「ハルヒ、お前は本当に長門を知らないのか?」 「知らないわよ、うるさいわね」 「お前、確か去年の三月にあった百人一首大会で二位だったよな」 「そうだけど、何の脈絡があるの?」 「脈絡なんかどうでもいい。それよりも、あの時一位になったのは誰だった?」 俺の記憶通りならそれは長門のはずである。読書好きのヒューマノイドインターフェース。 「さあ誰だったかしら。あたしの知ってる人じゃなかったわね。黒くて長い髪をした女子だったかしら」 長門はロングヘアではない。ハルヒは一時期髪の長かったときがあったが、長門は三年前に見たときも昨日見たときもショートカットだった。 「ねえ、あんたさっきから変だけど、どうかしたの?」 「どうもしてない」 俺は即答した。どうかしてるのはハルヒの頭か、それともこの世界か。 まさか――。 この感覚。ハルヒの病人を見るような目つき。当然いるはずの人間が突然いなくなった経験を、俺は過去にしている。 忘れもしない去年の十二月十八日。 目眩がして、世界がぐるぐる回転しているような感覚に襲われた。 あれをもう一度やらせようってんじゃねえだろうな。 断片断片が次々とフラッシュバックする。シャイな長門、髪の長いハルヒ、書道部の朝比奈さん、学生服を着た古泉。 「おいハルヒ、もう一度訊くが、お前は冗談を言っているのか? 言っているんだったらすぐにやめてくれ。土下座までならしてやる」 「もう一度言うわ。言ってない。あんた本当に頭がどうかしちゃったんでしょ」 ガラガラ。 教室の扉が開く音がして、俺は反射的にそちらを向いた。教室にいた男子が廊下に出ていっただけだった。間違ってもお前だけは出てくるなよ、殺人鬼朝倉。 俺はハルヒに向き直り、 「お前、光陽園学院にいたことはないか? というか、あそこは女子校だよな」 「そう、女子校。あんたが狂ってるものとして真面目に答えてあげるけど、あたしはあんな学校には一度もいたことがないわ。一年の最初からずっと北高生よ」 世界がおかしくなってるんだとしても、冬とまったく同じではないらしい。 「すまん。もう一つだけ訊いていいか?」 「いいけど」 「お前は一年の最初の自己紹介でこう言わなかったか? 『ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい』とな。そしてお前は俺と一緒にSOS団を設立した。合ってるか?」 ハルヒはやや複雑そうな顔をして俺を見ていたが、やがて答えた。 「ええ、 その通りよ」 * ホームルームが始まるまで、あと少ししか時間がない。 運のいいことに俺は今日普段よりも三分ほど早く学校に到着していた。それは妹の攻撃がいつにも増して強力だったからということに尽きるわけだが、そんなことはどうでもいい。 「ちょっと外に行って来る」 ハルヒにそう言って、俺は教室を飛び出した。 ハルヒは長門の存在を知らなかった。さまざまな出来事のうち長門の部分が消されて他の何かに書き換えられている。ハルヒがおかしいのか世界が変わっちまったのか。 瞬間、俺はまたしても強烈な目眩を覚えた。 デジャヴ。 三半規管がイカれたみたいに足許がぐらついてくる。 俺はこんな気持ちで、こんなふうに廊下を走ったことがあるのだ。ハルヒに引きずられて走らされたことならいくらでもあるが、自ら全力疾走なんてのはあの時と今くらいなもんだ。 そうだ。 あの時も、俺は朝倉から逃げて教室を飛び出した。そして長門はクラスにはおらず、古泉のいるはずの九組は吹き飛んでいた。 そして今、俺はまるで同じ道を辿っているではないか。 冗談じゃない。二度も同じことをやってたまるか。 長門のクラスにはすぐ着いた。朝のホームルーム前ということもあってクラスの中は雑然としており、この人混みの中で長門の小柄な姿を探すのは難しかった。目を皿にして教室のはじからはじまで走らせるが、長門らしき女子は見つからない。 「ふざけやがって」 俺は仕方なくクラスの中に足を踏み入れた。中学の級友とかで知っている顔を探しては次々と質問をぶつけていく。 長門有希という女子を知っているか。このクラスにはいないのか。この学年にはいないのか。 まるで申し合わせたかのような完璧さ。俺が声をかけた連中はそろいも揃ってトボけた顔をしやがり、当然のようにかぶりを振った。 つまり、そんな奴は知らない、と。 なんてこった……。長門を知らないのはハルヒだけではなかったのだ。 もう偶然などという言葉では片づけようがない。冗談説も通用しない。こいつらは集団で頭が爽やかなことになってるのか、まさかとは思うが世界改変があったのか。 俺はワケの解らんだろう愚問に答えてくれた連中に意識外で礼を述べると、くるりと回れ右をして絶望感を背負って廊下に出た。 何かが起こっているのだ。 ハルヒの次は長門が消える番ってか? ふざけんな。 俺は思い出す。この次、俺はいったいどこに向かったんだ。十二月十八日、長門がいないことを知った俺は誰に希望を託した? 言うまでもない、一年九組である。古泉のハンサム面がいるはずの理数クラス。そしてあの時、一年九組はなくなっていた――。 それを二年バージョンで起こす気か。大事な時だけ消えるってのはなしだぞ、古泉。 同時に朝比奈さんの顔も思い浮かんだが、いかんせん三年の教室は遠い。同学年であったのならどちらを選ぶかは微妙だが、それは今の問題ではない。 トラウマに押しつぶされそうになりながらも俺はフラフラの状態で二年八組に到着した。 その横には見間違いようもなくしっかりと教室があって二年九組というプレートが張り付けられている。突貫工事も今回は間に合わなかったらしいな。 俺は頭の隅で聞いたことがあるようなないような怪しい呪文を唱えながら、ホームルーム中なのも構わずに扉を開けた。 「どうしました?」 担任女性教師の声をバックに、教室内の全員がギョッと俺のほうを振り向く。 「古泉は、古泉一樹はいますか?」 「ああ」 くそ! 俺が見たところこの中には古泉の顔はない。そうでなくても、俺が尋常ではない表情を顔に張り付けて他教室に侵入すれば古泉は立ち上がって俺のところに来てくれるに違いない。 今度こそぶっ倒れるしかないかと思ったが、女性教師は何やら書類にさっと目を通すと俺に向かって、 「今日は休みですね。風邪だそうです」 そう言った。 九組の生徒も特に不審がった様子は見せない。クラスメイトが風邪を引いて休んだと聞かされたときのいたって普通の反応であり、そんな奴はうちのクラスにはいないという感じの反応を示している奴は一人もいない。加えて、俺の立っている入り口あたりの机が一つ空いていた。 「それで、彼に何か用だったんですか?」 「いや……別に」 俺は適当に返事をし、その空いていた椅子に古泉一樹と印字されているのを強烈に脳に複写してから九組を出た。 廊下の壁にもたれかかって、詰まっていた何かを吐き出すように深く息を吐いた。そうすると体中から力が抜けて、壁にもたれかかったままずるずると床に崩れ落ちた。 古泉はいるのだ。 確証はない。しかし、その可能性は高い。そうでなければあいつの椅子や机なんかが九組にあるわけがないのだ。 何ともいえない感情がこみ上げてきた。嬉しい、というやつだろうかね。 欠席というのが気にはかかるが、俺からすればそれも考え得る範囲である。 たぶん、あの教師が言ったような風邪というのはまずありえん。それはおそらく欠席理由にするだけの、表向きの理由だ。この非常時にマジで風邪でも引いていようものなら俺がすぐさまベッドから引きずり出してやる。 そうではなくて、古泉が欠席している理由は『機関』関連ではないかと思うのだ。長門が消えたのはほぼ確実であり何かが起こっているというのは間違いないから、その処理か何かに追われているのだろう。 気を利かして俺に電話一本もくれないような状態ってのはどんなもんかと思うが、俺は橘京子や周防九曜、敵対未来人を知っている。もしかするとあっちで大きな動きがあったのかもしれん。それがこの長門が消えているらしいという事態に直結している可能性は大いにある。 古泉の携帯電話にかけてやろうかと思ったが、ポケットにつっこんだ俺の手は虚しく布の感触に突き当たるだけだった。ちっ。教室の通学鞄の中だ。 仕方なく俺は立ち上がった。 しかし、いったい何が起こっているんだ。考えたところで解らないだろうが、考えずにはいられん。 長門がいなかった。そして誰も長門のことを知らない。知っているのは俺だけ。 シチュエーション的には冬の世界改変にそっくりである。しかしあの時、消えたと思っていたハルヒは光陽園学院にいたし、東中出身の谷口はハルヒのことを知っていた。 あいにく俺は長門の出身中学など知る由もないが、ということは今回もそういう感じの世界改変なのか。あいつも光陽園学院にいるとか、そういうオチなのか。 それとも本気でこの世界から消えちまったのか――。 長門のクラスを横切るとき、俺は廊下の窓からふと教室内を見渡してみた。 ホームルーム中で静まっているので確認しやすかったため、長門の机や椅子がないのはすぐに解った。古泉のように席が空いているということもなかった。 全員出席なのに長門はいない。 そして、恐ろしいことに誰もその矛盾に気づいていない。長門なんて女子は最初からいなかったかのように普通に振る舞っているのだ。 当然である。 最初からいなければ誰の記憶にも残らないし、いない奴の机や椅子があるわけがない。そういう理屈だ。 俺は目を背け、早足で二年五組へ戻った。
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……と、いかん。回想にかまけているうちにすっかり日が暮れちまった。 ハルヒは雨が降ってるからという理由で朝比奈さんを連れてとっくに帰っている。俺と長門はポエム作成を仰せつかり部室に残っていて、古泉は……こいつもまだ居残りながら、前回の小説誌をなにやら思わしげな表情で読みふけっていた。時々長門に話しかけていたりしたので、長門の不思議小説の解読でもやっていたんだろう。あれの内容では古泉のような登場人物が意味深な発言をしているので、俺よりも更に気にかかるんだろうね。しかし、何故今頃になって。 それはともかくポエムの方なのだが、明日が金曜日であるにも関わらず長門も俺も未だにテキストエディタを活用することなく、パソコンにはまっさらな画面が広がっているのみだった。ホントにどうすりゃいいんだよ。これ。 しかし、今はそれも隅においておこう。朝からずっと言いつぐんでいたのだが、俺はまた朝比奈さん(大)から下駄箱を介して手紙を受け取らされている。今の俺にとってはめっきり嬉しいものではなくなっているが、この手紙は読めば百日寿命が縮むものではなくむしろ伸ばす目的のものなので、俺は例え憮然とした面を浮かべながらも読むしかないのだ。 内容は放課後に元・一年五組の教室で待っているというものだった。以前にどこぞの朝倉さんからもらった手紙の文面と似ていて非常にお断りしたいのであるが、無視できるはずもない。それにこっちとしても会って話を聞きたかったしな。 だが、今回はこれまでとは違う。いつものようにトイレの個室で手紙の封を切りはしたが、それは骨をもらった犬が安全圏に赴いてそれを楽しむといったものではなく、単に散歩コースでお決まりの電柱程度の意味しかない。 それに、もう俺は言われたとおりの芸をする気もさらさらないんだ。朝比奈さん、俺は「お手」といわれて右前脚を差し出せばご褒美が貰えるといった行動に、今度はwhatを挟ませてもらうぜ。あの藤原の言葉をまるっきり信じているわけじゃないが、それでもあなたの行動は怪しすぎる。あそこで俺の朝比奈さんも藤原の話を聞いていたんだから、あの朝比奈さんより未来のあなたは全て知っていたはずなんだ。 それに、藤原は朝比奈さんたちは過去には最初から遡っていないと言っていた。この言葉を信じた上で過去に行くことが目的じゃないのなら、本当の目的は何なんだ? やっぱり、自分の未来へ導くためなのか? それが特殊な未来なら、彼女の指示通りに動く俺たちの未来には、これから何が待ち構えているんだろうか――――。 まあ、それも今から朝比奈さん(大)に会って問いただせばある程度の見当は付くだろう。今度ばかりはそれを聞かないと動きようもないし、時期的にもそろそろ話してくれたって良い。 ……丁度古泉と長門が残っててよかったというべきだな。こいつらには俺がこれから聞く話を帰宅の道中で伝えておこうと思い、 「古泉、長門。今から俺は少し席を外すが、またここに戻ってくるまで待っててくれないか? これからもっと未来の朝比奈さんと会ってくる。いい機会だ。色々聞いてみるよ」 「待って」 おや、という眼差しで長門を見る俺と古泉。長門は「話がある」と俺にうったえ、俺は席を立ってパイプ椅子を机に押し込もうとしていた姿のまま固まり、 「なんだ?」 「情報統合思念体のこと。そして、わたしたちとこれからの世界について」 ジッとこちらを見つつ、 「我々が四年前に観測した正体不明の情報フレアは、涼宮ハルヒが発生させた次元の変容によるものだったと判断された。そして今、情報統合思念体と存在レベルを等しくする天蓋領域の出現によって、思念体は今までにない変化を迎えている。これは、彼らとコミュニケートする方法を画策していく上で内部の情報が次々と展開され、我々が抱えていた自身の進化の閉塞状況が発展の兆しをみせているということ。それによって現在の思念体は、もしかすると進化の可能性は既に自律的なものにはなく、異なる存在との関わりによって変化をみせるといった世界人仮説の中にあるかもしれないと感じている。わたしの役目はそれの解析に当てられるかも知れない」 「なんでわざわざお前がやる必要があるんだ?」 長門は少し考えるような間を置き、 「思念体には、不確実でまれに裏腹な意味を持つ人間の言葉を理解することが出来ない。が、わたしなら……なんとなく、解りそうな気がするから」 そっか。それはな長門。お前がどんどん人間らしくなってきてるから、感情を含めた人の言葉の意味が分かりだしているって意味なんだと思うぜ。 長門はボーっとしたように、 「そして情報統合思念体は、観測対象を涼宮ハルヒという個体から全人類へと広げ、本来の人間の性質を知るためにこの世界を正しい次元体系に戻し、全ての矛盾を消し去った上で人類の経緯を見守りたいと考えている」 「それ、SOS団や……朝比奈さんはどうなるんだ」 「……主流派の意見では、四年前、世界改変以前の状態から開始する案が濃厚だが、朝比奈みくるやわたしたちの関係性を残存させて現在を改変することも可能。しかし、それはわたしたちの状態が一般的な高校生としての観念に基づいたものへと修正されるのが前提」 ……淡々と話す長門を見て、俺の心はズキリと痛んだ。お前、それじゃ…… ――あの時と、一緒じゃないか。 もちろんそれは拒否する。本来の歴史とやらに後ろめたさがないわけじゃないが、今、この世界が俺たちの現実なんだ。やたらにいじくりまわす方がよほど勝手だと思うね。 それに佐々木と二人で喫茶店に残って話をしてからというもの、俺も過去やらを変えようだなんて思いはしないんだ。あの時の佐々木の言葉は俺たちに指標を与えてくれている。それにな、長門にとっても非常に大切なことも話してたんだぜ。 そう思って拒否の意向を示そうとしたときだった。 「長門さんはこの世界と思念体の提案した世界の……どちらを望むのです?」 古泉に視線を配る長門。考え込むように、 「……わたしには、どちらも選べない」 そうだろうよ。だからあのときこいつは俺に選択権を委ねたんだ。古泉、無粋な質問はするもんじゃないぜ。 俺の視線に古泉は気付かず、 「そう……ですか、そうですね。ですが、思念体が強硬にその変革を推し進めたりしないのでしょうか?」 「多分、ないと思う」 「ほう」と、俺と古泉。長門は俺たちを見回して、 「そう急ぐものでもないから。暫くは現状維持で十分。それに何故か現在彼らは、あなたたちの意見に重要性を見い出している。他の存在に意見を求めるなんて、今までの思念体にはない概念だった。これについては情報統合思念体自身も不思議に思っている」 それは俺たちの行動が結果に直結しているからだろうか? 確かに、俺は以前よりも体裁を構わず行動するようになってきてる。あちらも胡乱なことは言えないんだろうかね。 「なるほど、承知しました。僕の機関側としてはある意味一安心です。それと、現在長門さんの思念体との関係は良好な状態に回復しているんですか?」 一瞬ハッとしたような表情を見せた長門はすぐさま無表情に戻り、 「……わたしはあなたたちに伝えるように命令されただけ。依然としてわたしと思念体との接続は最小限のものになっている。こちらから彼らの情報をダウンロードすることは出来ない」 「それってさ、お前が人間味を帯びてきてるからなのか? それとも、なんか悩みでもあるのか?」 「後者については違うと断言できる」 「そうか。それならいいんだ。とにかく俺はその案には反対だ。こっちの選択肢にはないものとして考えとくように伝えておいてくれ」 長門はゆっくりとした瞬きで返事をし、 「でも、現在の時間連続体による世界構成は非常に不安定。長期の見通しだと、いつ、どんなキッカケで崩壊するか解らない。人間や思念体問わず全世界の未来を紡げなくなる不測の事態が発生した場合のために、宇宙をあるべき姿に戻すという思念体の提案も覚えておいて欲しい」 「ああ。だが、絶対に崩壊させやしない。それも俺たちの役割なんだしさ。自分の選んだ道にしっかり責任は持つよ」 そう言うと、微笑を浮かべた古泉は俺を見ながら、 「ええ。それは僕も同様です。ですが、いずれ次元の状態は元通りにしなければならないでしょうね」 そうだな。だが、それはまだ今じゃないと思う。まだまだカタをつけなきゃならんものが残っているしな。まだ俺たちには考える時間が必要だ。とりあえずそれは保留……って、なんだかどっかで聞いたような会話だな? と思いつつ俺は部室を後にし、朝比奈さん(大)の待つ教室へと向かった。 そして元・一年五組であり俺の一年次の教室の前に着き、俺は扉を開いて中に入る。 瞬間だった。 「――ぐっ」 いきなり腹部に重い衝撃を受け、俺は思わず声を漏らした。前方では教卓の前で大人の朝比奈さんがにこやかな表情をこちらに向け、俺の腹部には――、 「……誰だお前」 「グスッ、先輩……助けてくださぁい……」 かなりの確率で人違いをしているらしいこの少女は、俺に突如として飛びついて助けを求めてきた。 ――なんだ? このクラスの生徒か? しかし、ここは朝比奈さん(大)が指定した場所で間違いないはずだ。現に室内にはグラマラスビューティーな女性がおいでである。 もしかしてこの女の子には彼女の姿が見えていないのだろうか。だったらうかつに朝比奈さん(大)に話しかけられんが……。 「ひぅ、先輩が……みんなが、オカシクなくなっちゃったんですぅ……うう……」 「ちょ、ちょっと待った! 人違いだ!」 顔を俺の胸に埋めつつギュウっと抱きしめてくる少女を振りほどき、俺は驚き顔の少女と顔を見合わせる。 …………この少女、どこかで見覚えが――? なかった。 だが、なんとなく意識の片隅に引っかかるような雰囲気を持っている。風体を見回してみると、この女の子の背丈は長門くらい、体重は長門より軽いだろう。髪質はパーマの後ブローしなかったような癖毛気味、スマイルマークみたいな髪留めを斜めにつけているのが特徴といえば特徴的な記号で、制服のサイズが合っていないのか、どことなくブカブカした着こなしをしている。ちっともこなれていないが。 ……見れば見るほど会ったことはないと感じる。校内で不意に見かけた新入生だろうか。 「もう、先輩だけが頼りなんです……オカシクない先輩たちなんて、オカシイもん……」 いやもう困るしかない。 この少女は明らかに俺を認知した上で話掛けてきているが、俺には先輩という言葉が誰を指しているのか、また、オカシイのかオカシクないのかどっちなのか全く分からない。まあとりあえず身元を聞いてみようと、 「誰だ。まず名を名乗ってくれないか」 「あっ」少女は涙で濡れた顔をグシグシと袖で拭き、「ご挨拶がまだでした。フフ、この世界では始めましてですね。失礼しちゃった。ゴメンナサイです」 「……ん、」 ――なるほど。まだ名前もなにも言われちゃいないが、俺が受ける自己紹介としては非常に解りやすい。 このファーストコンタクトはひどく懐かしく感じられるな。一年程前に宇宙人や未来人や超能力者たちと出会ったときと一緒だ。この世界では始めまして、ってことはつまり……。 ――ついに来たか、異世界人。 藤原の世界人仮説を信じるならば、この世界も異世界と関連性があるんじゃないかというのが以前に話した古泉による異世界人の考察に繋がっている。この少女がどんな世界から来たのか不明だが、そこにも俺はいるらしい。多分SOS団もいるんじゃなかろうかと思うが、一体どんな世界なんだろう。 まあ、まずは俺も一応自己紹介をしておくかと考え、 「つまりキミは異世界人なのか。俺は」 「あ、多分あたしの知ってるキョン先輩と変わらないと思います。フフ。あたしは朝比奈みゆきです。これからよろしくです。しばらくお世話になると思います」 「へ?」 もう驚くこともないだろうと余裕ぶっこいてたら、すぐさま軽いジャブを喰らっちまった。 こいつ、さっき名前なんてった? 朝比奈だって? じゃあ、この少女は俺の朝比奈さんの妹ってところだろうか? 確かに、口調に似通った部分があるが……。 と、俺の脳内で数々の疑問が浮かんでいるときに大人の朝比奈さんがこちらへと近づき、 「キョンくん、驚かせてごめんなさいね。みゆきもいきなり抱きついたりしちゃダメでしょ? あなたは女の子なんだから」 「はぁい」 舌っ足らずな返事をする自称朝比奈みゆき。 てゆーか、どうしたものだろう。出来れば、俺は大人の朝比奈さんと二人っきりで話をしたいのだが。 「あー……」俺は言葉を考えながら美人教師風の女性に「この女の子はどうしたんですか? 何だか誰かがオカシクなったとか言ってますが」 すると少女のほうが頭を振りながら、 「ちがいますよう。SOS団のみんながオカシクなくなっちゃったんです」 まるでSOS団の初期設定が変態であるかのような言い草だ……って、確かに全員デフォルトで変態要素が付属してたっけ。最近唯一まともであった俺までもが怪しくなってきている次第であるが、 「どういうことなんだ?」 つまり、SOS団が普通人の集まりになっちまってると言うのだろうか。 で、俺たちに助けて欲しいと。 うーん、イマイチ話が掴めない。なにをもって助けることになるのだろう。それにSOS団が普通になったってのは……。 ――って、ちょっと待て。それって長門がついさっき話していた現象じゃないか? その異世界の思念体がSOS団、いや、世界をそのように変えちまったのか? いや、だがその世界がどんなものなのかが解らん限りは何も言えんな。 俺が異世界人らしき少女からもう少し詳しく話を聞いてみようかと思っていたら、 「キョンくん、現在とても大変な事態が発生しているの。詳しくはわたしが説明します」 と大人バージョンの朝比奈さんが言い、その後に少女へと笑顔を向け、 「みゆきちゃん、これからお母さんはキョンくんと二人でお話があるから、あなたは先に帰って待っててちょうだいね。もう勝手に遠くに出て行っちゃダメよ?」 「行かないもん」プイッと顔を俺に向け、「じゃああたしは失礼します。それと、あっちの世界の長門おねえちゃんが、解決の鍵は先輩だって言ってました。どうぞよろしくです。またすぐに会いにきますね。フフ」 カラリと笑ってちょろちょろと教室の外に出ていく朝比奈みゆき。 「もう」 それを見送る朝比奈さん(大)が溜息をつき、 「やっぱり子育てって大変ですね。小さい頃はとても素直な子だったのに、あの年頃になってからはわたしの話をロクに聞いてくれないの。この間もね、あの子ったら……あ、」 俺の顔を見て何かに気付いた。そりゃそうだろう。なんせ俺の目と口は点になり、まるで牛飼い座と乙女座と獅子座が織り成す春の大三角形を写しているんだから。当たり前だ。朝比奈さん(大)は普通に話を進めているが、明らかに説明不足だ。 俺は持ってきた質問を投げかける前に、それについて聞いてみた。 「……結婚されてたんですか?」 まさか子供がいるとは。しかもその子が異世界人だとは予想だにしなかった。だが、既婚であったというのは考えてみれば予想出来たはずだよな。不思議と俺のイメージの中にゃ微塵も存在しなかったゆえにモロに面食らっちまった。大体、本当の年齢も知らないんだから結婚がどうとかの話までは回らなかったわけで……。 「うふ。わたしはまだまだ独身ですよ? これ以上のプライベートは……禁則事項です」 口元にひとさし指をつけてウインクを飛ばしてきたが、俺には彼女の言っていることがまったくわからない。 もう呆然とマヌケ面を浮かべるしかなくなっていると、 「あの子の紹介がまだでしたね。うっかりしちゃった。あの子は、長門さんの子供なんです」 パードゥン? 「あ、長門さんから預かった子供って言ったほうがいいかな」 「……は?」 朝比奈さん(大)の話があまりにもぶっ飛んでいたような気がしたのでもう一回言って欲しいとは言ったが、正直二回も聞きたくはなかった。何故かって? 決まってる。 「な、長門の子供!?」 聞き間違いであって欲しかった。 「そうです」 肯定までされちまった。 「あの子は自分では気がついていないかも知れないけど……長門さんたちと同じインターフェイスなんです。あ、それでもわたしはあの子を本当の自分の子供みたいに思っているんですよ? 実際にあの子は、普通にしていれば同年代の女の子と全く変わらないんです」 「……すみません。最初から話して貰えませんか? 俺には、まったく話が読めないんですが」 危うく本題を忘れちまいそうな程にこの教室に来てから色々あった。 まず異世界人との邂逅を果たしたかと思いきや実は朝比奈さんの子供で、しかして本当は長門の子供であり、またさらにその子から異常事態が発生しているSOS団の存在を告げられては、こうして俺の耳から白煙が昇るのも無理はない。このまま話が進めばポンッという小気味良い音と共に思考回路がクラッシュだ。 「じゃあ、まずはあの子の話からしますね。覚えてます? この時間平面からの少し前、長門さんが最初に学校を病気で休んじゃった日のこと」 忘れるわけがない。あれは衝撃だった。実際は風邪でもなかったし、現在進行形で気にかかっている事柄だしな。 「あの日、わたしが家に帰ったら……部屋に赤ちゃんがいたんです。最初に見たときはホントにビックリしたんだから」 「……それは驚くでしょうね」 俺が風呂の蓋をあけたら妹が潜んでたってときですら肝を潰されたってのに、家に見知らぬ赤子が居たらそれこそパニックだ。 「でも、このわたしから見たらそれは必然でした。その赤ちゃんは長門さんがわたしに託した子で、こちらの未来で引き取ってわたしが育てるようになっていたの。そしてさっきの年齢になったら北校に入学させて、SOS団に加わる予定だったんだけど……」 「どうしたんです?」 朝比奈さんは少し困ったような顔を浮かべて、 「ちょっと最近あの子とケンカしちゃって……、みゆきは、わたしが涼宮さんから貰った制服を持って家を飛びだしていっちゃったんです。暫くしても一向に帰って来なかったから必死に探したんだけど、みゆきはどの時間平面にも居なくなってしまってて、もうわたしたちは大騒ぎしました。そうしたら先日ひょっこり帰ってきて、あの子は異世界に飛んでいたっていうのが分かったんです」 「そりゃまた、えらくスケールのでかい家出ですね。って、なんでハルヒから制服を貰ったんですか?」 「詳しくは禁則にあたるので話せませんが、わたしが北校を卒業してしばらくした後、涼宮さんがこれからは北校の制服がコスプレになるからって言って自分のをくれたの。制服ならわたしも当然持ってたんだけど、多分、涼宮さんはわたしともう会えなくなるっていうのを感じてたんじゃないかしら。だから、わたしも自分の制服を彼女にあげて二人で交換したんです。……ふふ、あの日は今でも思い出しちゃう。懐かしいなあ」 ……つまり、それが朝比奈さんとハルヒにとって二人が顔を合わせられる最後の日だったんだろう。俺は朝比奈さんにあげられるものなど無いように思うが、俺もなにか貰えたのかな? 「……へ? き、禁則事項ですっ」 あたふたと顔を真っ赤にしてそう言う大人の朝比奈さん。一体俺と朝比奈さんの別れに何があったんだろうか? とは言いつつも、もしかしたらお別れのキスが待っているのかもしれんなと感じている。俺だって彼女の反応をみてそれくらいの希望的観測は立てられるのさ。 「と、とにかく……ここからが重要なんです」 すぐさま真剣な表情になった彼女は、 「あの子が行ってた異世界というのが……涼宮さんが創造した、この世界を複写した世界だったみたいなの。……わたしも最初は信じられませんでした。だけどあの子の話を聞く限りでは、そうとしか思えません」 息をほんの少し吸い込むと、 「多分、その世界が発生したのは……新学期が始まって最初に行った不思議探索の日のうちだと思います。あの日キョンくんは佐々木さんから電話を貰っていますよね?」 ん、たしか……風呂に入っているときに電話があった気がするな。 そっか。佐々木が他三名を交えて俺と会合したいと申し入れてきたときだ。ええ、ありましたね。 「それはこちらにとっての規定事項だったの。あなたに佐々木さんの能力について知ってもらって、そして、未来人の彼が佐々木さんに話を持ちかけるための」 ……この話を聞いて、くっと俺の眉間にしわが刻まれた。 が、まだ朝比奈さん(大)には話がありそうなので黙って聞くことにしていると、 「ですが、その電話からこちらの世界とその異世界とが違ってきています。あちらの世界では、佐々木さんからの電話がみゆきからの電話に変わってしまっていて、日曜の佐々木さんたちとの話し合いがなくなってしまったんです。そして休み明けの登校日にはSOS団に入団希望の新入生が沢山入ってきたらしくって、みゆきはそこに紛れて涼宮さんの入団テストを受けて最後まで合格して……その世界のSOS団に加わってしまったんです」 ……もしかして、こっちじゃ団員募集の張り紙を貼ったのはいいものの、その意味に誰一人として気付かずに結局秘密のまま幻となったハルヒのあの入団試験のことだろうか? そう。そういうこともあったのだ。ハルヒは新団員を採るためにと頑張って入団試験を作ってたが、その試験をするまでもなく誰一人SOS団の門を叩く輩はなかったんだ。なんせチラシをぱっと見ただけじゃSOS団の入部試験だとは気付けないので、ある意味一次審査で全員が落っこちたってことだ。だから、俺は未開催だった入団試験の内容をよくは知らない。どんな試験があったんだろうか。それに一つ気になるのが、 「ハルヒが作ったあのめちゃくちゃな試験の問題に、よくあの子は合格したもんですね」 そう。ハルヒは試験問題を寝不足にまでなって考えてたとか言っていたが、完成稿にはたった一つの問題しかなく、それを見た俺たちは、ああこいつも本気で新団員を入れる気はなかったんだなと感じたような内容だった。それは何だったかと言えば…… 『SOS団入団試験:我がSOS団に足りないもので、それが加わったらもっと世界が盛り上がると思うものを書きなさい』 という無茶で無理無体な質問だった。俺たち団員なら迷わず異世界人と答えるが、はたして他の人がそう答えたところでハルヒが合格点を出すとは思わない。こんなヘンテコな問題を作った本人の理由としては、「問題を解くだけなら簡単でしょ。あたしが求めてるのは意気込みなの。そのレベルを問うには、自分で答えを作らせるのが最良で、これが出来なきゃダメなのよ。もちろん、採点はあたしの基準に照らしあわせてするけどね。面白かったら合格、そうでないなら残念無念、また来年ってこと」 つまり、あいつが計画していた入団試験は単なる気まぐれで、最終的にこの試験で落っことすつもりだったんだろう。 ……だがしかし、この問題に異世界人・朝比奈みゆきはなんて答えたんだろうか。 そんなことを考えていると、朝比奈さん(大)はなにやらあたりを見回し、誰も居ないことを確認すると、 「あの子は、多分何も知らずに書いたんだと思うけど……」 そう言って、あの少女の答えを教えてくれた。それは……、 『(A)未来からやってきた、魔法を使う宇宙人』 ……なるほどと思ったね。宇宙人と未来人と超能力者を一緒の鍋で煮込んだような答えだ。しかもそれを作ったのは普通人の振りをした異世界人だってんだから、合わせて一人SOS団の出来上がりだな。って、それじゃ団になってないか。とにかく、ハルヒが気に入りそうな回答としては模範に近いだろう。などと頷いていると、 「これ……ズバリあの子のことなんです。本人は気がついていないと思いますが……」 「じゃあ、あの子にも長門たちみたいな力があるんですか?」 「いえ、自分の意思で情報操作を行うまでには至っていません。だけど、インターフェイスとしての本能が無意識のうちに存在している……そうじゃないと考えられない行動をあの子は出来てしまうんです」 「それ、一体どんなことなんですか?」 朝比奈さん(大)は、「それは――」と言葉を溜めて…… 「――TPDDによって、異なる世界を渡ることです」 「……TPDDで、異世界を渡れるんですか?」 朝比奈さん(大)の言葉をそのまま疑問形にした俺の問いに、 「いえ、普通の時間平面破壊装置では不可能です。だって、それによる移動のベクトルは三次元方向にしか向いていないから。そうね……二つの世界を並走する列車で考えてみてください。わたしたち乗客は列車内しか移動出来ないけど、隣の列車に飛び移ることが出来たらもう一つの列車に乗ることが出来るってこと。他にも様々な問題があるんだけど、大体そんな感じ」 それでね、と続けて、 「あの子は時間平面を破壊するデバイスを再構築して、ベクトルの方向を自在に操れるように改造しているみたいなの。これは海洋船を宇宙船に作り変える位とんでもないことなんだけど、完成された理論を有するインターフェイスになら可能だったということです。情報統合思念体はTPDDを使用しないから考えもしなかったんだけど、みゆきによってそれは証明されましたから。これは多分、わたしたちの人間的な教育が彼女になんらかの影響を及ぼしているんだと思うわ」 そのTPDDは宇宙の彼方まで行きそうだなと思いつつ、 「……なんとなく、異世界を渡る能力についてはわかりました。それで、その異世界では何が起こっているんですか?」 俺が聞きたいのはこちらの世界についてだが、流れ上これを聞かないわけにはいかないだろうなという気持ちから出た質問に、 「一言で表すなら……涼宮さんが能力を暴走させているんです。もしかしたら、そうさせるために世界を創造したのかも……」 「それ、勝手に能力が暴走しているのとは違って、ハルヒがそうさせているって話ですか?」 「ええ、恐らくは」 ……俺の中で、雪山で遭難したときの心境がフラッシュバックされた。 あんまりな話だ。それじゃ、その世界の俺たちが浮かばれない。コピーがどうのという話じゃなく、あまりにも利己的で、自分勝手な行動じゃないか。 ハルヒがそれをやっただって? ……正直に言おう、俺には信じられないな。あいつはいつだって自由奔放だが、そんな人の心を弄ぶよう真似をやるわけがない。だから、つまり――、 「お決まりの無意識ってやつでしょう。それなら解る。そりゃ誰にだって抑えようにも抑えられない不可抗力なんだから」 いつだって問題を起こすのはハルヒだが、あいつが悪いわけじゃないんだ。悪いのはあいつに宿っちまった変哲な能力で、言っちまえばハルヒだって被害者みたいなものなのだ。 俺の目の前にいるスレンダーな朝比奈さんは、 「ええ。きっかけはそうだったんだと思います。それでね、その世界でみゆきがSOS団に入った後、こちらの世界でも行われたSOS団と佐々木さんたちとの話し合いがありました。こちらでは長門さんの代わりに喜緑さんが参加していたけど、あちらではみゆき以外の純団員で会合があったみたいです。どんな話だったのか詳細は不明ですが、結果からするとこちらの内容とほぼ同じだったと思われます。そしてその後、橘さんの組織はこちらと同じ事件を起こしたの。でも、その結末もこちらと相違ありませんでした」 意見が平行線のまま終わった、最初のSOS団とあいつらでの話し合いのことか。あの後の橘京子側の策略には俺が一人で疲弊するハメになったが、別に思い返すこともないだろう。その次の日に俺は周防九曜に拉致られて…… 「それが終わって、世界に徐々に変化が現れてきました。えっと、この変化はこちらとの違いとかじゃなくって、そのままの意味で世界がおかしくなっていってるんです。未確認生物や超常現象、それらが世界各地でひっきりなしに発生したんです。その世界のわたしたちには伝聞した情報しか伝わってなくて涼宮さんは信じていなかったけど、実際にそれらは存在していました」 「……ん? 俺が周防九曜にさらわれる事件はなかったんですか?」 朝比奈さん(大)は沈鬱な表情を作り、 「キョンくんが九曜さんにさらわれることはなかったわ。多分、そちらの世界のわたしはひどく慌てたと思います。規定事項が、二つも消えてしまったんだから」 「……規定事項? 二つとは?」 「一つはさっき話した佐々木さんからの電話で、もう一つは、九曜さんの空間に閉じ込められたあなたを未来人の彼が助け出すという行動です」 ……なんか、オカシイぞ。藤原はあれは予定外だったって言ってたじゃないか。だが、あれはこの朝比奈さん側にとって規定事項だったってのか? 「……なんで藤原に俺を助け出させる必要があったんです?」 朝比奈さん(大)は少しもじもじした様子で、 「詳しくは禁則事項ですが……あれがないと、彼らは『あの事件』を起こさないからです。わたしたちにとって、それが起きることこそが大切な規定事項でしたから」 ………俺は言葉を作れなかった。 いま口を開いたら、俺はこの人を糾弾せずにはいられないだろうからだ。 ――あの事件。それは佐々木を巻き込んで、あいつの閉鎖空間に《神獣》を生み出しちまったSOS団と藤原との抗争だ。落ち着いた結果こそ得られたが、それが全部……藤原の行動も含めて、俺の目の前にいるこの女性の未来の、掌の上の出来事だったってのか。気に喰わない。あんたらは俺たちの釈迦であるつもりなのか? 言っとくが、俺たちはいいようにされてばっかりの猿じゃない。それを俺は言いにきたんだぜ、朝比奈さん(大)。 「話を戻しますね」 俺の心が惨憺としてきていることに気付いていないかのような声で、 「ここからは、時間的にこの世界では未来の出来事になります。この世界での今度の日曜日……三日後ですね。あちらの異世界で行われた市内の不思議探索で、SOS団は佐々木さんたちと鉢合わせをします。そして結果だけ言えば、九曜さんを初めとして、彼らとSOS団の正体が涼宮さんにばれてしまうんです」 「ハルヒに……俺たち、いや、古泉や長門、朝比奈さんの正体が……?」 「いえ、わたしたちだけではありません。それに、彼女が一番動揺したのは――」 ……次の言葉に、俺は目を見開いて驚愕の色を表さざるを得なかった。 「――キョンくんが、ジョン・スミスだったこと。それを聞いた涼宮さんは、時空改変能力を発動させて宇宙の姿を変え、情報創造能力によって世界を作り変えてしまったんです」 「……まさか、俺がもしジョン・スミスだとハルヒに名乗っちまえば……世界はそうなるってことなんですか?」 「……恐らくは。これはわたしたち未来人がずっと懸念していたことなんです。涼宮さんが不思議と出会って、それを認めてしまうこと。それが前から話していた強力な分岐点なの。我々はそうなった場合を予測も出来なかったんだけど、みゆきのおかげで今ここに一つの可能性が示されました。この事態はなんとしても回避しなければなりません」 「確かに、その世界は助けなきゃならない。ですが、それがこっちの世界でも起きることはあるんですか?」 「こちらの世界でそれが起きるとは思いません。ですが三日後、この世界がその異世界と同じ時間軸になったとき、こちらの世界はその世界から強力な干渉を受けると推測されます。何故なら、その世界が『立方時間体』によって作られているから」 また妙なワードが出てきた。お願いだからもう勘弁してほしいと言いたいね。 「『立方時間体』による世界を平たく言えば、空間ではなく、世界全体が閉鎖されてしまった世界なんです。今までの閉鎖空間は『紙』単位で閉鎖されていたんだけど、今回は『本』として閉じられたってこと」 「……それが、なんでこっちの世界に影響を?」 「閉鎖されてしまった世界には、それ以後の未来が存在しません。なのであちら側の世界はこちらの世界と同期を図り、歴史をこちら側の世界の未来で進行させようとすると予測されています。こちらの世界の体系が『平方時間体』から『立方時間体』に変化することはありませんが、STCデータ……つまり世界の内容は同じものになってしまうの」 「じゃあ……こっちの世界の俺たちも記憶をなくしちまうんですね」 「はい。ですが、それどころの騒ぎではありません。そのまま未来を放っておけば、近い将来に地球がなくなってしまうんです」 地球壊滅の危機らしいので厳粛に話を聞いていると、 「こちらの世界は『平方時間体』で出来ていますから、涼宮さんの情報創造能力は消えません。そして、異世界での出来事を思い出してみてください。新しい団員、超常現象の発生、そして……宇宙人や未来人、超能力者や異世界人と涼宮さんの邂逅を」 ……つまり、その世界ではハルヒの願望がことごとく叶っているってことか。 「でも、なんで地球がなくなるですか? ハルヒはそんなことを願いはしない」 「いいえ。本人にその気はなかったとしても、彼女は願ってしまっています。そして、地球が壊滅してしまうのは……早くて約十六年後、長くて約二十五年後です。涼宮さんが織姫と彦星のどちらに願いを唱えたかによって変わりますね」 「………………………」 やたら長い三点リーダは、俺が過去の記憶を検索しているためだ。 「……ハルヒ。やっぱり、アホな願いはするもんじゃないぜ……」 これは検索結果への俺の感想だ。なにが導き出されたかというと――――、 『世界があたしを中心にまわるようにせよ』 『地球の自転を逆回転にして欲しい』 ハルヒが去年の七夕で笹に吊るした願い事の、後者の方だ。フライングですでに一つ願いが叶ってるじゃねえか。もう自重してもいいだろう。とは誰に言えばいいんだろうね? だが、もとよりそんなことを言ってる場合じゃない。 「根本的な質問なんですが、その世界を助けるにはどうすれば良いんですか?」 朝比奈さんは少し沈み込んだように、 「それは……長門さんに聞いてみないといけません」 「長門に? ……ですが、さっきまでのあいつはそんなこと微塵も言ってませんでしたよ? そんな重大な事態が起こっているんなら、あいつがそれを俺に言わない筈がない」 「うん。だって現在の彼女はこの事態を知りませんから。だけど、情報統合思念体は知っているはずなんです。世界が二つに分かれてしまった瞬間から、私よりも詳細に全ての出来事を。世界がアニメや漫画だとするなら、思念体はそれを別の所で認識する視聴者のようなものですから」 確かに長門と思念体には不仲説が流れてるし、あいつも思念体の情報をダウンロード出来ないって言ってたな。 「じゃあ、喜緑さんに聞いてみましょうか? 今なら教えてくれそうだし」 「いえ、それは望めません。彼女は最初からこの現象を把握していましたし、第一、観察が目的の思念体としては現状のままで困ることはないんです。地球が滅んだとしても、もとより彼らにとっては些細な出来事でしかありませんから」 ぬ……。思念体にとっても、なんやかんやする俺たちより大人しい俺たちのほうが良いだろうしな。人間の観察も、ハルヒの能力がありゃどうとでもなる。 じゃあ、俺たちが黙ってても世界は思念体の望みどおりになっちまうところだったってことじゃねえか。……くそ、思念体もこの朝比奈さんも、親玉クラスのやつらは信用できやしない。今じゃ、よっぽど藤原のヤツの方が好印象のように感じるね。どっちにしろ不愉快だ。 「それにあちらの世界は閉鎖されているので、こちらの思念体は観察こそすれ干渉は出来ないんです。今のみゆきも、TPDDであちらに向かうことは出来ません。あの世界には、無限のエネルギーがありませんから」 どうしようもないじゃないか。……でも、 「だったら、その異世界がそうなっちまう前の時間に遡行して、それを防げばいいんじゃ?」 「今となってはもう不可能です。それに、今日わたしがここにみゆきを連れてくるのは元々規定事項として存在していたの。だから、もしかしたらその異世界の発生も必然だったのかも。わたしが何も聞かされていなかっただけで」 「へ? それを教えるために来たんじゃないんですか? じゃあ、ここに来た本来の目的は?」 「長門さんに関わる規定事項を実行してもらうためです。えっと、既に今、古泉くんも長門さんもあなたに協力的ですよね?」 ああ。あいつらの上がどうであれ、俺たちはちゃんと信頼し合っている。ここにくるまで長かったような短かったような気がするが、石炭がダイヤに変化する程の時間はかからなかったし、SOS団はそれ以上のモンに成形されていると自負するね。 「ふふ、良かった」 大人の朝比奈さんは不意打ち気味に秀麗な笑顔を作り、 「この規定事項が上手くいけば、多分その異世界の異常も正しく修正できるようになると思います。今こそSOS団の皆が力を合わせて行動するときなの。みゆきも含めてね」 ……ってことは、ある程度のオチがここでつくってわけか。ようやくだ。 「わかりました。その規定事項ってのは何なんですか」 「実行するのは明日なんだけど、内容はキョンくんが過去の空白を埋めること。それがなければ、現在のわたしたちが存在していませんから」 「は?」 ……過去の空白、そんなんあったか? 「あります。とても重要な……《あの日》の中に。明日キョンくんには、長門さんが世界を改変した瞬間に再度飛んで貰うことになります。今度は、前回と違う結末で終わらせなければなりません」 ……意気込むまでもなかったな。これにはwhatと言わざるを得ない。 「――なんで……」思った以上にうろたえていたことに気付きながら、「あの日は……既に、終わってるじゃないか。だから今があるんだ。その過去を変えちまったら、この現在は……」 ――ちょっと待てよ。 そうだ、今が変わっちまう。現在の俺たちがいなくなってしまうんだ。何故、この人はそんなことを俺にさせようとする? まさか俺が……古泉だってそうだが、大人の朝比奈さんに懐疑的だからか? だから歴史をやり直そうってんじゃないだろうな。自分の存在が脅かされる前に先手を打っておこうってハラなのか? 「いえ、あれは繰り返された時間を作るために……」 「ちょっと待ってください」 このまま朝比奈さん(大)の話を聞くのは危険だ。丸め込まれちまう可能性がある。 「その前に聞いておきたいことがあるんだ。俺があの山で拾った棒のことです。なんであれの存在を俺たちに黙ってたんですか?」 「あれは過去のわたしが知るにはまだ早かったの。知らなければ、こちらがウソをつかないで済みますから」 ニコヤカにUFOの存在を大統領に教える秘書のような台詞を吐き、 「それに、あなたが後でそれを拾うのも規定事項として出ていましたので」 「…………」湧き上がる黒い情動を抑えつつ、「もう一つ。藤原のことなんですが、あいつから聞いた話は本当なんですか?」 「ええ。彼の話した理論は偽りのない真実です。ですが……」 ――もう、わかった。 「え?」 目を丸くする朝比奈さん(大)に、 「あなたの話については間違いがあるってことでしょう?」 「……そうですけど、これはちゃんと説明しないと……」 「もう聞きたくないですね」俺は続けざまに「俺が今日聞きたかったのは、俺があなたの未来からやらされている行動は正しいのかどうかってことだった。そして、藤原はあなたたちを虚像の未来だと言った。それを丸々信じ込んじゃいなかったが、あんたがこれから俺にやらそうとしていることはおかしいじゃないか。もともと、過去を変えるってのはタブーなはずだ。けど、そうさせる理由は説明が付く。あんたは、今の俺たちが邪魔なんだ。だから歴史を変えて、俺たちがもっと未来に従順な犬の場合の現在をつくろうとでもしているんだろ。俺が今一番聞きたいのは……あなたたちは、一体何者なんだ?」 「……わたしたちはこの歴史の先の未来です。そして藤原さんの未来は、実はわたしの未来より少し先の地続きの未来なんです。まだ詳しくは禁則なので言えませんが……。それでね、彼らには今までの行動をして貰うために、彼の過去であるわたしの時間平面で組織内の情報を調整していたんです。実は規定事項は記述統計学に基づいて立てられるものではなくて、世界の遺伝子と呼べるものを分析したものなの。その遺伝子の中からわたしたちの行動が影響しているものを見つけ出して、その通りに時間を調整するのが未来人の仕事」 「そんなことはどうだっていいんだ。あなたは佐々木を巻き込んだ事件も、長門の事件のときだって規定事項だって言ってましたよね。それはつまり、そっちの未来を導くためにあんたらが仕組んだことなんじゃないのか。正しい未来ってのは、一体なんなんですか?」 「……未来に、正しいも間違いもありません。向かってくるものを受け入れながら、進んでいった結果が未来に繋がるんです。これは藤原さんの話を聞いていたときに、キョンくんがわたしに言ってくれたことでしょう?」 ……ああ。そうだった。だから、俺がこれからやることに文句はなしにしてもらいますよ? 「ええ。俺たちは自分で未来を作っていく。だから、俺はもうあの時間には行きません。これでいいんですよね?」 「……それでは、これを受け取ってください」 と言いながら、さして慌てた風でもない朝比奈さん(大)は俺に封筒を差し出してきたが、俺はそんな彼女を見て……、 「……もういい加減にしてくれ。その手紙は何なんだ? 俺の答えがわかってたとでも言うんですか?」 「そ、それは……」 ――もう、我慢の限界だ。 「俺は、あんたらのあやつり人形じゃないんだよ! ……もう踊らされるのはごめんだ。大体、あんたらは人の気持ちをなんだと思ってやがる。あの小さな朝比奈さんだってそうだ。長門も、佐々木もだ。そのに、あの日に戻れだって? もう長門にあんな光景は見せたくないし、俺も二度と見たくはない。そっちの未来にいいように振り回されてちゃあ迷惑だ。だからこれからは、俺たちは自分で未来を切り開いて行く。あんたの命令なんか聞かずに、俺たちが信じた未来をね。その異世界だって俺たちが自力で救ってみせるさ。なんせ、どのみち動くのは俺たちなんだから」 「待って! またあの過去に行くのは……長門さんのためなの! 今は行きたくないのなら、お願いだから、この手紙だけは――」 「……要らないって言ってるじゃないですか。俺も、もうあなたと話すことはないんです。色んな意味でね。じゃあ、俺はこれで失礼します」 戸惑いながら必死に俺へとうったえ続ける彼女を尻目に、俺は踵を返して教室の外へと向かった。 「――あの場所で、待っていますから……!」 待ちたいなら好きなだけ待っていればいいさ。だが……。 もし俺がそこに行くとしても、俺の朝比奈さんも一緒に連れて行く。いや、SOS団の全員で。だ。 第五章
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「あら、なにかしらこれ。」 私が下校の途中、道端に一冊の黒塗りのノートが落ちていた。 「デス・・・ノート?」 ノートの表面にはそう書かれていた。 「日記帳に使ってたノートも無くなっちゃたし、これ新品みたい だからこれ使おっと♪」 私はとりあえずノートをカバンの中に入れ帰宅した。 自宅でノートを開いてみると、1ページ目に英語が書かれていたわ。 でもやたら読みづらそうな字体だし、第一こんなもの読んだ所で 何がいいのか分からなかったから、読まなかった。 切れた前の日記帳の続きから書き込んでみた。 ○月×日 古臭い、つまらない毎日!おもしろい事って 泉みたいに湧いて出てこないの? 一つぐらいあったっていいじゃない!不思議のなる 樹ってないの?ま、そんなのあったらそれこそ不思議だけど。 ---次の日--- ハルヒ「やっほー。あら、今日は古泉君休み?」 キョン「聞いてないのかハルヒ・・・古泉、昨日死んだんだよ・・・」 ハルヒ「え・・・嘘でしょ?」 キョン「いやホントだ。心臓麻痺だったらしい。 あれだけ戦ってりゃ・・・くっ・・・」 キョンは涙を流しながら話してくれた。 もう昨日までいたあのスマイル(ちょっと気持ち悪かったけど)が 見られないのね・・・ その日は残りのみんなで古泉君の葬式に出て帰宅した。 ○月△日 朝からキョンに悲しい話をさせられた・・・。他と 比較にならないくらい悲しい・・・。 奈良とかに旅行したら気が晴れるかしら。 みくるちゃんが副々団長だから、明日みくるちゃんが くるならば副団長にしなくちゃね!明日のSOS団はコスプレの るつぼよ! その後に「でもみくるちゃんドジっこだから、マンションの最上階の階段から 転げ落ちたりしないわよね?」と書いてみた。 ---次の日--- ハルヒ「やっほー。今日はみくるちゃんに朗報よ・・・ってみくるちゃんは?」 部室に入ると生気をなくしたようなキョンが座っていた。 キョン「朝比奈さん・・・昨日死んだらしい・・・」 ハルヒ「ちょっと、ちょっと!どういうことよ!」 キョン「自宅のマンションの屋上の掃除をしたあと階段でつまずいて、1階まで 一気に転げ落ちたらしい・・・。ううっ・・朝比奈さん・・・」 キョンは伏せて泣きまくっていた。 そうえば学校中の男達が泣いていたのはこのためだったのね・・・ もうみくるちゃんに着せ替えが出来ない・・・そう思うと私も泣きまくった。 その日も私・キョン・有希と3人で葬式に行った。 ○月◇日 長い一日だったわ。お葬式の斎場の 門をくぐる時、もう私は泣いていたわ・・・。 有希、キョン、私・・・。SOS団はもう3人なのね・・・。 希望をもたなくちゃ。 その後改行して「でも有希ってあんなにカレーを食べて喉つまらせたり しないのかしら」と書いたけど、不謹慎だと思ったからその後は書かなかった。 ---次の日--- ハルヒ「やっほー。死んだ人たちの分も元気を出して張り切って行こう!」 目の前には廃人のようになってしまったキョンがいた。 ハルヒ「ちょっと、キョンどうしたの?あれ?有希はまだ?」 キョン「長門ならもう来ないよ・・・」 ハルヒ「なんでよ?」 キョン「長門も昨日死んじまったんだよ!」 キョンは怒るように言った。 キョン「なんでみんな・・・みんな死んじまったんだ・・・もうどうなってるのか訳がわかんねえよ!」 そういうとキョンは私を抱きしめて、 キョン「ハルヒは死んだりしないよな、そうだよな。」 ハルヒ「当たり前じゃない・・・死ぬわけ無いわよ!」 その会話の後2人で泣きまくった。 下校後、有希の葬式に行った。ひっそりとしていた。 警察の人の話によると夕食のカレーを食べていて大きな肉が喉に詰まって 窒息死したらしい・・・ ○月☆日 SOS団に残されたのはキョンと私だけになってしまった・・・ キョンには『死んだりしないよな』っていわれたけど明日には どうなっているか怖くてたまらない。 暗い話題を書いたらだめだから明るい話題を書かなくっちゃ。 キョンって本名は○○○○なのになんでキョンっていうのかしらね。 わたしがこんなあだ名つけられたら首つって死んじゃうわ。 これは最大のミステリーかもしれないわね・・・早速明日キョンと一緒に調べなきゃ。 ---次の日--- 朝のHRのじかんに岡部から突然ショッキングな事を言われた。 岡部「あー、みんな落ち着いて聞いて欲しい。昨日○○○○・・・キョンという 言い方の方が分かりやすいか・・・・ともかく、奴が 首をつって自殺した。何か悩みでもあったのだろうか、先生も残念で ならない・・・」 岡部の話の後半は全然話しに入らなかった。 私はその場でキョンの家に向かった。 ハルヒ「嘘よね・・・死んだなんて嘘よね・・・」 キョンの家に着くと葬式の準備をしているところだった。 妹ちゃんが私を見つけると抱きついてきてわんわん泣いてた。 私も一緒に泣きまくってた。 ○月▽日 ついに私、涼宮ハルヒ1人になってしまった・・・ 今日はもう何も書きたくない。 それからしてじき心臓が停止した・・・なぜ・・・ リューク「How to use itはゴシック体か日本語にしなけりゃ駄目か? しかし、キョンと涼宮以外、縦に知り合いの名前を書いていたとはな。 さすが涼宮さんです・・・いや違う、人間って面白!」 おしまい。